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第2ラウンドの4海域 年内に公募開始

経済産業省と国土交通省は洋上風力発電の事業者公募の「第2ラウンド」を年内に開始する見通しだ。秋田、新潟、長崎の計4海域が対象で、発電規模は計約180万キロワットに達する。国は新たなルールを適用して公募を実施する方針だが、前回に続いて今回も、各海域で大手エネルギー企業や商社などが地元企業を巻き込んで激しい主導権争いを繰り広げることが予想される。

新たなルールで
事業者を公募

年内に公募を開始する「新潟県村上市、胎内市沖」

洋上風力発電の事業者を公募するのは、「秋田県八峰町、能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「新潟県村上市、胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計4海域。このうち「秋田県八峰町、能代市沖」は去年9月に洋上風力発電施設を優先的に整備する「促進区域」に指定された。事業者の公募は去年12月にいったんスタートしたが、経産省、国交省が今年3月、事業者公募の評価基準を見直す方針を示したことに伴い、公募が実質的に中断している。そのほかの「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」「新潟県村上市、胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」の計3海域は、今年9月に促進区域に指定されている。

国が評価基準を見直したことにより、評価点全体の240点のなかに「事業計画の迅速性」という項目が設けられ、20点が新たに配点された。このほか「売電単価」に120点、「電力安定供給」に20点、「運転開始までの事業計画」に15点、「事業実施体制・実績」「資金・収支計画」「周辺航路、漁業などとの協調・共生」「地域経済への波及効果」「国内経済への波及効果」「関係行政機関の長などとの調整能力」に各10点、「運転開始以降の事業計画」に5点が配分されている。

洋上風力発電の公募の第1ラウンドでは、三菱商事を中心とする企業連合が、秋田、千葉の計3海域をすべて落札し、各方面に波紋を広げている。これをうけて、国は複数の海域で同時に事業者公募を実施する場合、ひとつの事業体が大半の対象海域を落札しないように1事業者あたりの落札制限を設ける方針。1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万キロワットとする規制を設け、これを超えた場合は新たな落札をできなくする意向を示している。国は落札制限の対象とする公募は、現時点では第2ラウンドの4海域のみとする考えを示している。

第2ラウンドの公募
三菱商事不在のなか新たなルールを適用

三菱商事洋上風力が環境アセスを中止した「秋田県八峰町・能代市沖」

第2ラウンドで事業者を公募する秋田、新潟、長崎の計4海域では、参入を希望する事業体が環境影響評価の手続きを進めている。「秋田県八峰町・能代市沖」では、これまでにドイツ企業の日本法人を含む5つの事業体が参入の意思を表明している。この海域では、三菱商事洋上風力も去年6月から環境影響評価の手続きを進めていて、今年9月に第2段階の「環境影響評価方法書」の縦覧を終えていた。方法書によると、八峰町と能代市の沖合に出力1万1000~1万5000キロワットの風車を最大33基設置し、発電の最大出力は40万5000キロワットと見込んでいた。しかし今年11月、国と秋田県に事業廃止を通知し、環境影響評価の手続きを中止している。同社は中止の理由を明らかにしていないが、国が評価基準を見直したことが背景にあるとの見方も出ている。

「秋田県男鹿市、潟上市・秋田市沖」には、これまでに大手エネルギー企業や大手商社などの4つの事業体が参入の意思を表明し、環境影響評価手続きを進めている。「新潟県村上市、胎内市沖」は、ドイツ企業や米国企業の日本法人、大手ゼネコンなどの6つの事業体が環境影響評価手続きを進めていて、激戦の様相を呈している。「長崎県西海市江島沖」は、長崎県佐世保市の西方沖にある江島の周辺海域で発電事業が実施される。これまでに、大手エネルギー企業やドイツ企業などの2つの事業体が参入の意志を表明している。

現在、三菱商事グループは秋田、新潟、長崎の計4海域で、環境影響評価手続きを実施していない。「秋田県男鹿市、潟上市・秋田市沖」では、かつては三菱商事のグループ会社の三菱商事パワーシステムズが大手エネルギー企業を中心とする合同会社に参画していたが、いまは出資を取りやめている。三菱商事は秋田、新潟、長崎の計4海域への参入の可能性について口を閉ざしているが、洋上風力発電公募の第2ラウンドは三菱商事不在のなか、新たなルールのもとで事業者の公募が開始されることになりぞうだ。


取材・文/高橋健一

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