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洋上風力第2ラウンド 秋田、新潟、長崎の計4海域で公募開始

経済産業省は12月28日、再エネ海域利用法に基づく促進区域で洋上風力発電事業者の2回目の公募を開始した。公募が始まったのは、秋田、新潟、長崎の計4海域。23年6月30日までの約半年間にわたって応募を受け付ける。国による審査や県知事からの意見聴取、第三者委員会による評価などを経て24年3月までに発電事業者を選定する見通し。今後、落札を目指す事業者の動きが本格化しそうだ。

公募する4海域すべてで
FIPを適用

第1ラウンドで事業者を公募した「秋田県能代市、三種町、男鹿市沖」

国は19年4月、発電事業者に一般海域の30年間の占有を認める再エネ海域利用法を施行した。同法に基づき、20年11月から1回目の事業者の公募「第1ラウンド」が実施された。第1ラウンドでは、三菱商事を中心とするコンソーシアムが他を圧倒する低い価格を提示して秋田と千葉の計3海域を落札し、各方面に波紋を広げている。

今回実施される2回目の公募「第2ラウンド」は、新たなルールを適用して実施される。事業者を選定する際、評価点全体の240点のなかに「事業計画の迅速性」という項目が設けられ、20点が新たに配点された。このほか「売電単価」に120点、「電力安定供給」に20点、「運転開始までの事業計画」に15点、「事業実施体制・実績」「資金・収支計画」「周辺航路、漁業などとの協調・共生」「地域経済への波及効果」「国内経済への波及効果」「関係行政機関の長などとの調整能力」に各10点、「運転開始以降の事業計画」に5点が配分されている。

第2ラウンドでは、ひとつの事業体が大半の対象海域を落札しないよう1事業者あたりの落札制限を設ける。1事業体あたりの発電・送電容量の上限を計100万キロワットとする規制を設け、これを超えた場合は新たな落札をできなくする。政府は落札制限の対象とする公募は、現時点では第2ラウンドの4海域のみとする方針を示している。

「新潟県村上市、胎内市沖」は
激戦の様相

4海域の公募占用指針(出典 経済産業省)

第2ラウンドで事業者を公募するのは、「秋田県八峰町、能代市沖」、「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「新潟県村上市、胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計4海域。発電規模は計約180万キロワットに達する。このうち「秋田県八峰町、能代市沖」は21年9月に洋上風力発電施設を優先的に整備する「促進区域」に指定された。21年12月に事業者の公募をいったん開始したが、国が22年3月、評価基準を見直す方針を示したことに伴い、公募が実質的に中断していた。そのほかの「秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖」、「新潟県村上市、胎内市沖」、「長崎県西海市江島沖」の計3海域は、22年9月に促進区域に指定されている。

第2ラウンドでは、対象となる4区域すべてにフィード・イン・プレミアム(FIP)を適用する。秋田、新潟の計3海域の入札上限価格を19円/kWh、「長崎県西海市江島沖」を29円/kWhに設定する。第1ラウンドでは、3区域すべてで上限価格を29円/kWhに設定した。今回は秋田、新潟の計3海域で、前回よりも10円低い水準に定めている。「長崎県西海市江島沖」は地質構造上、海底に固定する基礎工法にジャケット式を採用することを想定しているため、ほかの3海域よりも上限価格を引き上げた。

6つの事業体が参入している「新潟県村上市、胎内市沖」

秋田、新潟、長崎の計4海域では、これまでに合わせて18の事業体が参入の動きをみせている。「秋田県八峰町、能代市沖」では、欧州企業の日本法人を含む5つの事業体が環境影響評価手続きを進めている。「秋田県男鹿市、潟上市・秋田市沖」では、国内外の再エネ事業会社や大手商社など5つの事業体が事業計画を公表している。「新潟県村上市、胎内市沖」では、欧州企業や米国企業の日本法人や大手ゼネコンなど6つの事業体が環境影響評価手続きを進めていて、激戦の様相を呈している。「長崎県西海市江島沖」は、長崎県西彼杵半島の西方沖にある江島の周辺海域で発電事業が実施される。この海域は地質構造上、ほかの3海域よりもコストがかかり増しすることが想定されるため、これまでに参入の意思を表明したのは2事業体にとどまっている。

評価基準が変更されたとはいえ、今回の公募でも「売電価格の低さ」の評価点が前回と同様に全体の5割を占めている。円安などの影響で建設資材が高騰するなか、各事業体がFIPの適用をふまえて売電価格をどのように算定するかが重要なポイントになりそうだ。


取材・文/高橋健一

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