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豊田通商 エジプトで2か所目の風力発電事業

豊田通商は3月6日、子会社のユーラスエナジーホールディングスとエジプトのスエズ湾沿いで、風力発電設備の建設・運営に参画すると発表した。出力は約50万キロワット。今月中に着工し2025年8月の運転開始を目指す。同社が参画する風力発電設備はエジプトで2か所目。

スエズ湾沿いに
84基の風車設置

スエズ湾沿いの建設予定地(出典 豊田通商)

風力発電設備が建設されるのは、年間を通じて風況の良いスエズ湾沿いのガルフ・エル・ゼイト地区の陸地。計画では、1基あたりの発電能力が6000キロワットの風車を84基設置する。総事業費は約860億円。豊田通商とユーラスエナジー、フランスの独立系発電事業者「エンジ―」、エジプトの建設会社「オラスコム・コンストラクション」が共同出資して設立した「レッド・シー・ウィンド・エナジー」が事業会社。2025年から25年間にわたって発電設備を保有・運営し、エジプト送電公社向けに売電する。

事業会社への出資比率は、エンジ―35%、オラスコム・コンストラクション25%、豊田通商20%、ユーラスエナジー20%となる。国際協力銀行と日本貿易保険、三井住友銀行、農林中央金庫、ソシエテ・ジェネラル(フランス)、欧州復興開発銀行から協調融資を受ける。
豊田通商とユーラスエナジーは、2019年に同グループとしてはエジプトで1か所目となる風力発電設備の商業運転を開始している。出力は26万2500キロワット。スエズ湾沿いのガルフ・エル・ゼイト地区に2100キロワットの風車を125基設置した。風力発電としてはエジプト初の独立系発電事業者(IPP)で、20年間にわたって発電設備を保有・運営し、エジプト送電公社向けに売電する。

エジプト政府
再エネ導入を推進

メキシコの風力発電設備(出典 ユーラスエナジー)

アフリカ北東部のエジプトでは人口増加が続くなか、政府が太陽光発電や風力発電などの再エネの導入を進めている。これと合わせて、エジプト政府は国内外のエネルギー事業会社や建設会社などと連携して、アフリカでの発電・送電関連プロジェクトを推進し、スーダンなど周辺国への電力輸出に取り組んでいる。

エジプトでは、2011年にアラブの春、2013年には政変があり、政治と経済が混乱し、これに加えて火力発電に必要な天然ガスの不足により、一時は深刻な電力不足に陥った。2014年以降は政情も落ち着き、国際機関の支援もあって多くの発電所の建設が進んだため、他国に売電するまでに発電能力が高まっている。

エジプトでは、石油やガスによる火力発電の割合が高いが、国内の燃料資源は枯渇の懸念もある。世界有数の貯水量を誇るアスワンハイダムの水力発電は、現状から発電量を増やすことは難しい。このため、政府は2015年に「Egypt’s Vision 2030」を策定し、再エネの比率を2014年時点の約9%(うち水力8%)から、2030年までに35%(うち太陽光16%、風力14%)に引き上げる目標を設定している。

エジプトの面積は日本の約2.7倍で、国土の約95%が砂漠だ。砂漠に住民はほとんどおらず、太陽光や風力の発電に利用できる土地は十分にある。豊田通商は「ユーラスエナジーと協業しながら本事業を展開していくとともに、引き続き、エジプトにおける再生可能エネルギーの拡大および経済発展に貢献していきます」とコメントしている。

豊田通商グループのユーラスエナジーは、国内外で風力発電と太陽光発電の再エネプロジェクトを手がけている。国内では合計約1.08GWの再エネ発電設備を操業中。海外では15の国と地域で再エネ事業を展開している。地域別ではアジア・オセアニアで合計約255.3MW、アフリカで262.5MW、米州で合計約625.9MW、欧州で合計約1.2GWを操業している。

DATA

豊田通商プレスリリース


取材・文/高橋健一

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