注目キーワード

English 日本語

国内事例

洋上風力・海事の先進企業2社と協業! 「日鉄エンジニアリング」の“大本命O&M”始動!

日本製鉄グループで、環境・エネルギー関連プラントや海洋インフラ向けの大型鋼構造物などの建設を行う日鉄エンジニアリングは、今年に入って立て続けに洋上風力発電のO&Mにおいて他社との協業を発表した。その理由について聞いた。

ドイツ大手のO&Mと
協業に至った背景

日鉄エンジニアリング(以下、NSE社)は、日本国内で唯一のオフショアコントラクターとして、50年以上にわたり、国内外の石油・天然ガス開発用の洋上プラットフォームや大型海洋インフラ建設を手掛けてきた。

大型海洋鋼構造物に関する技術を活かし、2010年から洋上風車基礎のEPCI事業(設計、調達、建造、現地据付の一括請負)を展開。石狩湾新港洋上風力発電(出力112MW)、北九州響灘洋上風力発電(出力220MW)向けのジャケット式基礎のEPCIなどを担っている。


NSE社は、福岡県北九州市の若松工場に大型鋼構造物を作製する広大なヤードを保有している。

また、陸上風力発電、廃棄物発電、オンサイト熱電供給など、日本国内、東南アジアで50カ所以上の発電所O&Mの実績がある。そんな同社が今年1月、ドイツのDeutsche Windtechnik Offshore und Consulting GmbH(以下、DW社)と、日本国内の洋上風力発電施設向けO&Mで協業を始めた。

DW社は30年以上の実績を持つ世界有数の風力発電O&Mサービスプロバイダーだ。現在、ヨーロッパを中心に、世界11カ国において風力発電施設(洋上・陸上)向けにO&Mサービスを展開している。


世界有数のO&MサービスプロバイダーとなったドイツのDeutsche Windtechnik社。その背景には、自社保有している独自のトレーニングセンターでの技術者育成と、世界の大手風車メーカーの特徴を押さえたメンテナンスノウハウの蓄積がある。

DW社との協業の背景について、NSE社の担当者は「日本ではまだどこも洋上風力向けのO&M実績を持たず、先行する欧州での知見・経験が日本でも活かせるから」だという。

ヨーロッパでは洋上風力発電が発達しており、洋上風力発電施設のメンテナンスデータやトラブル事例、その対処方法などのノウハウがかなり蓄積されている。

そんな海外のO&M会社、しかもこの分野でトップシェアのDW社との協業は、NSE社が今後日本で洋上風力事業を進める上で大きなアドバンテージとなる。


NSE社は、海洋作業船2隻を所有し、大型海洋構造物やパイプラインを施工する国内随一のマリンコントラクターである。

風車には、稼働開始後一定期間のメーカー保証はあるものの、稼働率を維持するためにはメンテナンスが必須だ。一方で、そのコストは、事業者にとって大きな負担となる。DW社のノウハウを活用することで、メンテナンスの質を上げつつコストを最適化していきたいという狙いがある。

DW社にもメリットがある。日本の洋上風力市場に参入するには、複雑な法規制への対応や地元関係者との調整が必須であり、事実上の参入障壁があった。それを熟知しているNSE社と組めば、市場に参入しやすくなるというわけだ。

実際に日鉄エンジニアリングとタッグを組んだ企業の声

Deutsche Windtechnik Offshore und Consulting GmbH
CEO

Carl Rasmus Richardsen


「当社は欧州・台湾の洋上風力発電所(DanTysk wind farmで80基、Sandbank wind farmで72基等)を手掛けるなど、世界中の洋上風力の実績があります。日本の洋上風力発電O&Mの水準をあげていくため大いに貢献していきます。今回、日本市場をリードするNSE社と素晴らしいマッチングが実現しました。互いに優れたO&Mを誇る2社が手を組むことで、より包括的なサービスを提供できるようになり、日本の洋上風力の発展につながると私達は信じています」


機動力の高い船舶の確保で
深田サルベージ建設と協業

さらにNSE社は、洋上風力O&Mの実行に必要不可欠な作業用船舶の供給について、深田サルベージ建設(以下、FS社)との協業体制を構築する。

FS社が保有する各種作業船、運航に関する技術・操船管理のノウハウなどを、NSE社の洋上風力O&Mに優先的に活用できるようにする。それにより、機動的かつ競争力のあるサービスの提供を可能とする。

1910年創業のFS社は、鉄構工事や海洋土木工事などのインフラ整備事業を手掛けてきた。

今後、大型作業船による基礎・風車の輸送・現地作業などの洋上風力発電施設の建設・メンテナンスや特殊作業船(SOV)を 用いた点検・保守事業に取り組む。


深田サルベージ建設は、長大橋架設や港湾・空港整備工事など国家的な大規模プロジェクトにおいて重要な役割を担ってきた。大型作業船など日本有数の船舶を所有し、高い機動力を活かした洋上風力O&Mに取り組む。

もともとNSE社が国内事業でFS社に船舶作業を発注するなど、取引先として長年関係を築いてきた。洋上風力O&Mにおいて、仮に何らかのトラブルが起こり、すぐに修繕が必要になった場合、船舶を素早く手配する必要がある。故障して発電できなければ、その分だけ事業損失につながるからだ。

「船舶が必要な時に使用できるかも分からなければ、仕事にならない」とNSE社の担当者は話す。

その点、FS社は日本有数の船舶保有数と運航技術があることをNSE社は把握していた。それが、今回の協業につながった。

日本独特の海の条件を熟知
ISPのトップランナーへ

洋上風力は設計・施工にあたって、海底調査をし、台風などの気象や地震といった日本独特の条件を考慮した上で、どのような構造や施工法が適しているかを検討する必要がある。

設計段階で、日本海事協会の「NK認証」の取得が必要で、そのためにいろいろなパターンのシミュレーションをしなければならない。また、ブレードや発電機など風車の部分だけではなく、支柱となるタワー、それを支える基礎、そして送電網とつなぐ海底ケーブルなどまでケアする必要がある。

NSE社はこれまでの実績で、日本の海の条件を知り尽くした設計・施工力が強みだ。基礎や海底ケーブルの維持にも深い知見がある。

NSE社は今後、電力会社やメーカーの関連会社ではない、独立系のインディペンデントサービスプロバイダー(ISP)として、洋上風力O&Mのトップランナーの地位を目指していく。

PROFILE

日鉄エンジニアリング株式会社
執行役員 環境・エネルギーセクター
営業本部長

谷岡孝一氏

問い合わせ

日鉄エンジニアリング株式会社
東京都品川区大崎1-5-1 大崎センタービル
TEL:03-6665-2000


取材・文:大根田康介

WIND JOURNAL vol.4(2023年春号)より転載

関連記事

能代港湾区域
清水建設のSEP船

アクセスランキング

  1. 日本風力発電協会 新代表理事にJREの安茂氏が就任
  2. 【第3ラウンドの最新動向】 青森県日本海南側、8事業体が環境アセス実施 建設拠点は青森港...
  3. 【第3ラウンドの最新動向】 山形県遊佐町沖は異例の展開、30前後の事業体が参入...
  4. 秋田市南部沖、2033年度までの着工目指す 浮体式導入も検討
  5. 洋上風力第3ラウンド、2海域で公募開始へ 事業者選定の評価基準が焦点
  6. 洋上風力発電設備、EEZ内設置について意見募集 22日締め切り
  7. 【 参加無料 】4/11 WINDビジネスフォーラム ~ ラウンドの最新動向と最先端テクノロジー ~...
  8. 洋上風力第2ラウンド 、3海域の選定事業者を公表 能代市北部沖は先送り
  9. 洋上風力第3ラウンド 、青森、山形の2海域で公募開始 評価基準の配点は変更なし...
  10. 洋上風力「第1ラウンド」はすべて三菱商事系が落札! 圧倒的な低価格の理由は?...

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.05 | ¥0
2023/9/13発行

お詫びと訂正