東京都の小池知事、伊豆諸島沖に国内最大の浮体式導入 系統確保が課題に
2024/12/19
東京都の小池百合子知事は、伊豆諸島沖に100万kW規模の浮体式洋上風力発電設備の導入を目指す考えを明らかにした。完成すれば国内最大の出力となるが、本土につながる送電ルートの確保が課題となる。
伊豆諸島の海域
「洋上風力のポテンシャルがある」
浮体式洋上風力発電の導入を目指す伊豆諸島沖
東京都の小池知事は11月13日、アゼルバイジャンで開催された国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)のイベントで発言した。東京都が2023年に設置した専門家会議「東京都再エネ実装専門家ボード」では、秒速9メートル超の風がある伊豆諸島の海域は「洋上風力のポテンシャルがある」との評価を受けていた。都では、伊豆諸島沖に出力100万kW規模の浮体式洋上風力発電設備の導入を目指す。一般家庭90万世帯分の年間消費電力量を賄える計算で、完成時期は未定という。今後は、自然環境や生態系などを調査し、伊豆諸島の2町6村や漁業関係者と意見交換しながら、具体化に向けての検討を進めていく考えだ。
伊豆大島の離島振興計画に
浮体式の導入を盛り込む
島の南西沖で流況・波浪調査を実施(写真提供 大島町役場)
東京都は、昨年5月に策定した「東京都離島振興計画」に、伊豆大島で洋上風力発電設備の導入による再エネを活用したまちづくりを進める計画を盛り込んだ。東京都離島振興計画は、離島振興法に基づき、伊豆諸島地域の振興の方向性を示すもの。計画期間は2023〜32年度の10年間で、伊豆諸島の2町6村が対象となる。
計画によると、伊豆大島では、島内主電力の再エネ化に向け、浮体式洋上風力発電を軸とした再エネを活用し、化石燃料に依存しない電力供給の安定化、災害時でも水資源を確保できるような発電・送電網の多様化を目指していくとしている。そのうえで環境省の「脱炭素先行地域」選定を目指し、浮体式洋上風力発電をはじめとした再エネによる脱炭素化の大島モデルを構築することにより、新たな産業を形成し、地域活性化を図り、移住定住を促進していく方針を打ち出している。
伊豆大島は、東京都心から南南西約 120キロにある伊豆諸島最大の島。大きさは東西に約 9キロ、南北に約 15キロで人口は約6800人。島内の電力は、東京電力大島内燃力発電所(出力1万5400kW)から供給している。本土につながる送電ケーブルがないため、東京電力の系統からは独立している。町によると、電力だけでなく消費エネルギーのほぼ全量を島外から購入する化石燃料に依存しており、燃料価格の変動が島の経済に大きな影響を与えているという。また、大規模災害によって本土が被災した場合、島への燃料供給が停止し、長期間停電することが懸念されている。
伊豆大島は、島全体が活火山だ。約3万年前に海面上に姿をあらわし、その後100~200年に一度のペースで爆発的噴火を繰り返して火山体を成長させてきた。海底部分を入れると、水深400~500mくらいの相模湾の海底からそびえ立つ大きな火山になっている。陸地から海に出ると水深が一気に深くなることから、町では海底に基礎を固定する着床式ではなく、浮体式洋上風力発電設備の設置を検討している。
大規模な浮体式設備の導入にあたっては、本土につながる送電ルートの確保が課題となる。東京都気候変動対策部は、「送電ルートの確保については、あらゆる手法を視野に入れて検討していきたい」としている。
DATA
取材・文/高橋健一