山形県遊佐町沖と酒田市沖、2海域の経済波及効果を1779億円と試算
2024/12/06
山形県遊佐町沖と酒田市沖で事業化に向けた動きが進む洋上風力発電について、県は県内経済への波及効果を試算した。波及効果は最大で1779億円、就業見込み者数は最多で1万2474人と見込んでいる。
1.遊佐町沖が745億円酒田市沖は832億円と試算
2.基地港湾の酒田港総事業費は122億円
3.秋田県はマッチングの機会を提供
4.登壇予定者
遊佐町沖が745億円
酒田市沖は832億円と試算
事業費の推計結果(出典 山形県)
山形県は、洋上風力発電の導入に向けた議論にあたり、地域住民や経済界の理解促進、合意形成に向けた基礎的な資料とするとともに、県内のさまざまな分野に波及する可能性を広く周知することを目的に、監査法人トーマツに委託して遊佐町沖と酒田市沖の経済波及効果を調査した。
再エネ海域利用法に基づき、山形県遊佐町沖は「促進区域」に指定さて、酒田市沖は「有望な区域」に整理されている。
遊佐町沖は、風車30基で計45万kW、酒田市沖は風車28基で計50万4000kWの出力を想定している。設計・調査から建設、保守管理、撤去までの事業ライフサイクルを約30年とし、いずれも稼働期間20年で計算した。
経済波及効果の推計結果(出典 山形県)
この結果、経済波及効果を最大1779億円と試算した。内訳は、遊佐町沖が745億円、酒田市沖が832億円、酒田港の整備が202億円となっている。その根拠として、洋上風車の設置・運転・撤去などを中心とした事業費は、遊佐町沖が最大4791億円、酒田市沖が最大5595億円と見込まれている(インフレによる事業費高騰を考慮)。このうち一部を県内企業が請け負うと試算し、経済波及効果を1054億~1779億円、就業見込み人数が7383~1万2474人と試算している。
自治体の税収額試算結果(出典 山形県)
また、酒田市と遊佐町で使用するすべての電力を洋上風力の発電分で賄うと仮定すると、地元の新電力の収益が上がり、320億円の経済効果が期待できるという。山形県と2市町の税収は、地方交付税の減収を差し引いても、法人税や固定資産税の増収分で約180億円の増額が見込まれるとしている。内訳は山形県が56億7000万円、酒田市が65億3000万円、遊佐町が57億8000万円となっている。
基地港湾の酒田港
総事業費は122億円
基地港湾として整備される酒田港(山形県酒田市)
遊佐町沖の「促進区域」は、吹浦漁港の南側から酒田市との境界にかけての4131.1haが指定されている。事業者の公募は1月19日から7月19日まで行われていて、年内にも選定事業者が公表される見通しだ。
遊佐町沖では、参入を希望する国内外の発電事業者が早い時期から計画を公表し、環境影響評価の手続きを進めていた。これまでに環境影響評価を実施しているのは、合わせて24社。このうちの20社は2021年12月に「遊佐沖洋上風力発電に係る環境アセスメント共同実施コンソーシアム」を立ち上げ、環境影響評価の手続きを共同で進めている。同コンソーシアムのほか4社は、伊藤忠商事、東京電力リニューアブルパワー、日本風力開発、中部電力だが、国は日本風力開発と中部電力の2社について、第3ラウンドの2海域への公募参加を認めない方針を決めている。
酒田港は今年4月、洋上風力発電の建設拠点となる基地港湾に指定された。今年度から27年度まで工事が行われ、122億円。風車の大型部品を港に運び込むため、1平方メートルあたり35トンの重さに耐えられる岸壁をつくるtとともに、大型船の停泊場所を水深12メートルまで掘り下げる計画だ。
秋田県は
マッチングの機会を提供
隣接する秋田県では、秋田・能代港湾区域の発電事業者である「秋田洋上風力発電株式会社」の構成企業13社のうち7社が県内企業だ。このうち、5社の主な事業内容は土木・建築工事である。国の支援を受けて、県内企業が洋上風力発電の基礎架台の製造を実施した。再エネ海域利用法の公募を踏まえ、再エネ関連産業マッチングフォーラムを実施し、ナセルの外枠や輸送に関連する鉄鋼部品、配電機器や制御機器を収納し、保護する電気部品に係るサプライヤーについて、県内企業5社を候補として決定している。
北海道では、石狩湾新港沖洋上風力発電事業で、電気工事、土木工事、風車組み立て、架台製造などで多くの道内企業が参入した。洋上風力発電事業は組み立てや工事など、陸上風力の実績・知見を活かせる面もあるなかで、過去に陸上風力発電のタワーなどの風車本体の製造や関連工事、O&Mに関わった実績のある企業は道内に多数存在している。
12月12日(木)に開催する「第4回WINDビジネスフォーラム」では、一般社団法人機械振興協会経済研究所の執行理事兼所長代理 北嶋 守氏が「洋上風力産業形成に向けたサプライチェーンの構築と人材育成」について講演します。
登壇予定者
一般社団法人機械振興協会 経済研究所
執行理事 兼 所長代理
北嶋 守 氏
講演:「洋上風力産業形成に向けたサプライチェーンの構築と人材育成」
研究領域: 産業クラスター論、地域イノベーション論、中小企業論
秋田県出身。1994年4月、機械振興協会経済研究所入所。国内外で産業調査に従事。現在、機械振興協会執行理事兼経済研究所所長代理。明治大学政経学部兼任講師。専門は産業クラスター論など。2018年3月、学術博士取得(東京大学)。2023年3月、「洋上風力を日本の新たな牽引産業にするための条件」を学会誌に発表。2024年5月、編著『脱炭素社会の地域イノベーション』(同友館)を刊行。
日本の洋上風力人材育成のダイヤモンドモデル Porter(1990)を参考に北嶋氏が作成
ダイヤモンドモデルとは、マイケル・ポーターが考案した国と産業の関係を示すフレームワークだ。このフレームは、①要因条件、②需要条件、③企業戦略・構造・競争力、④関連産業・支援業界、⑤政府、⑥機会、以上の6つの要素で構成されている。北嶋氏は、このフレームを日本の洋上風力の産業化において、その国際競争力を高めるために必要な「人材育成」に絞って考察し、12月12日のWINDビジネスフォーラムで研究成果を披露する。
全国各地で導入が進む洋上・陸上風力発電。北海道石狩市と寿都町の政策責任者、「地域イノベーション論」の研究者、最先端テクノロジーの開発企業などをお迎えして、オンラインイベントを開催します!事前登録のみで無料ご参加いただけますので、お気軽にご参加ください。
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取材・文/ウインドジャーナル編集部