【洋上風力の事業環境整備】事業実現性の適切な評価とサプライチェーン形成の定義の明確化を要望
2025/12/04
洋上風力事業を完遂させる新たな公募制度について審議する国の合同会議が12月3日に開かれた。業界団体から事業実現性の適切な評価と、サプライチェーン形成の定義の明確化を求める意見が出された。
メイン画像:洋上風力第1ラウンド「秋田県由利本荘市沖」
前回の会議で
見直し案を公表
政府は、公募制度の見直しを含む事業環境整備について年内をめどに一定の整理をつける意向を明らかにしている。11月19日に開催された前回の会議では、国側から公募制度を含む事業環境整備の見直し案が公表された。
新たな公募制度の見直し案は、(1)事業実現性評価点の配点の見直し、(2)より精緻な事業実現性の採点、(3)迅速性の配点の引き下げとスケジュールの柔軟性の確保、(4)適切な供給価格での入札がされるための価格点の設計、(5)落札制限の適用、(6)選定事業者が撤退した際のルール設定の6点。
事業環境整備の見直し案は、(1)第2・第3ラウンド事業者のみを対象に「長期脱炭素電源オークションへの参加」、「価格調整スキームの公募開始時点までの遡及適用」、「公募占用計画変更に係る柔軟な対応」、(2)基地港湾の柔軟な利用を促進する仕組みの構築、(3)一定要件下における海域占用許可の更新の原則化、(4)再エネ価値が適切に評価されるための環境整備、(5)脱炭素電源に係る投資を促進するための支援を認める内容だ。
日本風力発電協会
事業実現性の適切な評価を

事業実現性評価点の配点の見直し案(出典 経済産業省)
12月3日の会議では、事業環境整備と新たな公募制度の見直し案について業界団体から意見聴取した。日本風力発電協会(JWPA)は、公募制度の見直し案について6点ともに大筋で賛同する考えを明らかにした。そのなかで、評価にあたっては、提出された事業計画の実現性を適切に検証できるよう、評価者側のチェック機能を十分に整備することが重要で、無理な事業計画を提示した事業者を的確に見極める体制の構築を要望した。
そのうえで、供給価格下限額(下限価格)を設定することについては賛同するが、事業完遂のため、(1)下限価格の公開、(2)上限価格と下限価格の価格水準への配慮(事業者の創意工夫の織り込み方についてを含む)、(3)海域ごとの特性を考慮した上限・下限価格の設定の3点を要望した。
JWPAは、「入札価格は下限価格近傍に集中する可能性が高く、下限価格が過度に低い水準で設定されると、事業の実現性が損なわれることを懸念している。現実的な事業者の創意工夫が極めて限定的である現状において、無理に下限価格に織り込むことは、事業実現性の観点から回避すべきと考えており、下限価格のFIP基準価格で十分に事業が成立する水準で設定してほしい」と述べた。
さらに、(1)国内調達比率やサプライチェーン形成計画のコミットメント、(2)サプライヤー選定の柔軟性、(3)迅速性の配点の3点については、業界内でも立場や方針の違いにより意見が異なる論点のため、今後の詳細検討にあたっては慎重な議論をお願いしたいと求めた。
再エネ長期安定電源推進協会
サプライチェーン形成の定義の明確化を

適切な供給価格での入札がされる価格点の設計案(出典 経済産業省)
再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)洋上風力委員会は、(1)長期脱炭素オークション、(2)オフテイカー支援、(3)海域占用期間の延長について対応策を検討いただいたことについて感謝申し上げると述べた。そのうえで、「サプライチェーン形成」の定義を明確にしていただきたい。併せて各評価項目(事業計画の実行面、電力安定供給・サプライチェーン形成、地域/国内経済波及効果)との関連について明確にしていただきたいと要望した。
より精緻な事業実現の採点については、精緻な計画を求める場合、計画変更の柔軟性とセットで検討すべきではないか。その際、計画変更が認められる場合の基準について緩和し、その旨を明確にすべきではないかと主張した。適切な供給価格での入札がされる価格点について、REASPは足元ではCPPA市場が限定的でもあり、下限価格の設定においては事業が実現可能な水準となるよう、前提となる事業費・売電収益等の妥当性について、丁寧にご議論いただきたいと話した。
3日の会議では、日本建設業連合会と日本埋立浚渫協会からも意見聴取した。経済産業省と国土交通省は、業界団体からの指摘を踏まえ、年内の意見集約に向けて引き続き検討を進める考えだ。
DATA
交通政策審議会港湾分科会環境部会洋上風力促進小委員会 合同会議(第40回)
取材・文/ウインドジャーナル編集部
2026年1月16日(金)に開催する「第5回WINDビジネスフォーラム」では、日本風力エネルギー学会 会長で、足利大学総合研究センター特任教授の永尾 徹氏が「日本の風力産業の活性化、国産風車の再興を目指して」をテーマに、風力発電産業の再構築の必要性を訴えます。

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