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洋上風力発電の人材育成! 国の補助金を上手に活用する方法

洋上風力発電市場において、専門人材の育成と確保は緊急の課題となっています。経済産業省の「洋上風力発電人材育成事業費補助金」は、国内における育成基盤の構築を目的に整備費用などを支援する制度です。制度の目的と活用事例を紹介します。

<目次>
1.2030年に人材不足が 1万5000人規模に
2.3つの専門領域における 具体的な活用事例
3.国の重点投資戦略と 今後の洋上風力事業の展開と展望
4.専門人材を育成する 環境づくりが最大の目的
5.先端デジタル技術の 高度人材育成にも活用を

 

2030年に人材不足が
1万5000人規模に

 
日本風力発電協会の試算によると、洋上風力発電に関する人材需要は2030年に約1万5700人、2050年には約4万8500人に達すると見込まれています。現在の人材規模が約5000人(第77回総合海洋政策本部参与会議の公開資料)にとどまるなか、経済産業省では今後の急激な市場拡大に対して現場を支える技術者や技能者の確保が大きな課題と考えています。

こうした需給のギャップを解消するため、経産省は「洋上風力発電人材育成事業費補助金」を2022年度に創設しました。この制度は民間企業や大学、地方公共団体などを広く対象としており、育成領域を「事業開発」「エンジニア」「専門作業員」の3つの分野に分類しています。
 

 

3つの専門領域における
具体的な活用事例

 

洋上風力発電人材育成事業費補助金の概要

 
具体的な補助内容としては、カリキュラムや教材の開発・制作にかかる費用、講習の運営費、GWOなどの規格に対応した安全訓練設備や実習用機器の購入、設置費用などが含まれます。補助率は必要経費の3分の2以内となっています。このように、基盤整備から運用面まで包括的な支援を行うことで、現場で即戦力となる多様な人材をバランスよく輩出することを目指しています。

補助金を活用した取り組みは、全国の大学や民間事業者などで着実に広がっています。事業開発分野では、長崎大学が代表団体を務める産学連携洋上風力人材育成コンソーシアムが、洋上風力の導入促進に資する高度人材の育成を目的として、大学生・大学院生向けの教育プログラムやカリキュラムの整備を進めています。発電事業者をはじめとする産業界と連携しながら、実践的な学びの場を構築しています。

またエンジニア分野においては、九州大学が構造設計や流体解析、電力系統との連携、データ分析などの技術系人材の育成を目的とした高度な教育体制を整備しています。専門作業員分野では、O&M訓練施設を運営する民間事業者やトレーニングセンター各社が制度を積極的に活用しています。GWO認証の標準規格に対応した高所や水上での安全訓練設備、風力タービン実機を用いたメンテナンス実習設備、アクセス船(CTV)の操縦シミュレータなどが導入され、作業員の技能向上を支えています。
 

国の重点投資戦略と
今後の洋上風力事業の展開と展望

 


2026年度の事業スケジュール

 
高市政権の成長戦略において、洋上風力発電は戦略17分野に盛り込まれ、さらなる重点投資と支援強化が進められています。2026年7月には国の関係審議会において洋上風力発電事業の完遂に向けた事業環境整備策の詳細や、今後の案件形成の方向性が示され、案件の本格展開に向けた官民の動きが一層加速することとなりました。

加えて、気象や海象条件が厳しい過酷環境下における浮体式実証事業の公募が開始されています。この実証事業では、アジア太平洋地域をはじめとするグローバル市場への展開も視野に、浮体式洋上風力の低コスト化や量産化技術の確立を目指しています。こうした大規模な事業展開を力強く支える基盤こそが、高度な専門知識と技能を備えた人材にほかなりません。国の施策と連動した確実な人材育成が求められるなか、経産省ではより幅広い分野における補助金の積極的な申請と活用を呼びかけています。
 

 

専門人材を育成する
環境づくりが最大の目的

 
洋上風力発電の本格展開に向け、経産省の折居 直風力政策室長に「洋上風力発電人材育成事業費補助金」の目的と今後の展望について話を聞きました。
 


経済産業省 資源エネルギー庁 
新エネルギー課 風力政策室長 折居 直氏 

— 制度の目的とこれまでの成果をどのように感じていますか。

折居室長 洋上風力発電は再生可能エネルギーの主力電源化において重要な役割を担っていて、急速に高まる人材需要に対応して国内で自立的かつ継続的に専門人材を育成・確保できる環境を構築することが、制度創設の最大の目的です。
制度創設以降、全国の大学や民間事業者から意欲的な申請を数多くいただいています。直近の2025年度は8件を採択し、これまでの取り組みを通じて同年度には約2100人程度の人材育成を行っており、現場で必要とされる人材を育成する基盤が着実に確立されつつあります。

— これから求められる人材とは。

折居室長 洋上風力発電が国の成長戦略における重点投資分野に位置づけられ、官民による投資や案件形成の動きが加速しています。洋上風力発電事業は、30年を超える長期にわたり地域社会や関連産業と協調しながら推進する大規模なプロジェクトです。
事業開発、エンジニア、現場施工や運営管理など、どのフェーズにおいても人材不足が生じないようバランスよく育成することが重要です。高い意欲を持ってこの分野に参入し、多様な関係者と協力しながら事業を牽引できる人材の育成に、業界全体で中長期的な視点を持って取り組んでいただくことを期待しています。
 

 

先端デジタル技術の
高度人材育成にも活用を

 


経済産業省 資源エネルギー庁 
新エネルギー課 風力政策室長 折居 直氏 

 

— 浮体式の人材育成への期待は。

折居室長 現時点での事業化の中心は着床式ですが、日本の海域環境を考慮すると、将来的には浮体式の導入が広がる可能性が高いと認識しています。現在はGI基金などを活用しながら技術開発を進めている段階ですが、日本の過酷な海域環境で培われた技術やノウハウは、将来的にアジアをはじめとする海外市場へ展開する際にも強みとなります。将来の浮体式導入を見据え、長期的な視点を持って専門技術や技能を備えた人材の育成を進めていただきたいと考えています。

— どのような分野からの参入を期待していますか。

折居室長 洋上風力発電産業の裾野を広げるためには、ゼネコンやマリコンをはじめ、海事、造船、重工業といった周辺産業からの参入や連携が不可欠です。既存分野で高度な技術や知見を有している人材が、洋上風力専門の知識を習得してスムーズに適応できるよう、リスキリング(学び直し)やアップスキリングを支援するプログラム開発にもこの補助金をご活用いただけます。既存産業の優れた人材・技術を生かし、強靭な産業基盤を確立するためのアプローチとして、この制度を積極的に活用していただきたいと考えています。

— この制度をどのように活用していただきたいですか。

折居室長 AIを活用した画像診断や水中ドローン(ROV)によるリモート点検など、先端デジタル技術を取り入れた高度人材育成プログラムの開発といった新たな領域での申請も歓迎します。また、自治体のみなさまにおかれましては、地元の教育機関や事業者と密接に連携し、地域から次世代のエネルギー産業を支える人材を育成する取り組みを進めていただきたいと思っています。地元で育った人材が地元の港湾や海で活躍することで、地域に根ざした持続可能な産業振興と雇用創出の好循環を創り上げていただきたいと考えています。関係者のみなさまからの意欲的な申請を心より期待しています。
 

 

DATA


事務局担当
パシフィックコンサルタンツ株式会社
E-mail:r8-owp-hrdp@tk.pacific.co.jp


取材・文/ウインドジャーナル編集部
写真/松尾夏樹 

 

 

WIND JOURNAL vol.11(2026年秋号)より転載

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