【深堀り解説】30円/kWhの供給上限価格案は? 専門的な視点で読み解く
2026/09/11
国は洋上風力ラウンド事業の公募再開に向け、具体的な議論をようやく開始した。供給上限価格を実質的に30円/kWh程度とする案は、事業採算性の確保が難しいとの指摘がある。
メイン画像:洋上風力第1ラウンド「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」
30円程度の目安は
厳しい価格水準
経済産業省は7月14日に調達価格等算定委員会を開いた。このなかで国は、第1ラウンドの再公募と第4ラウンド以降の公募制度見直しの新たな枠組みとして「想定供給価格幅」を設定する意向を示した。
想定供給価格幅とは「事業完遂のために必要と考えられる水準を前提としたうえで、発電事業者が現実的な創意工夫を講じることを想定した価格」と「供給価格上限額」の間の価格幅を指す。会合では当面の案件形成においては、着床式の発電コストについて30円/kWh程度までを優先的に案件形成を進める目安とする案が示された。
洋上風力第1ラウンドは、昨年8月に3海域の計画が中止となり、再公募されることとなった。供給上限価格を実質的に30円/kWh程度とする案について、業界関係者は「正直言って厳しい価格水準」と評価する。
なぜならば、日本風力発電協会がアンケートをもとに試算した、事業採算性を確保できる現実的価格帯である40円台半ばを大きく下回るからである。経産省と国土交通省は30円/kWh程度の目安について、昨年2月に公表された発電コスト検証ワーキンググループの着床式洋上風力モデルプラント発電コスト試算30.9円と整合性がとれると説明する。
この30.9円という金額は、第7次エネルギー基本計画の策定に向けての参考情報として試算された。2023年までに新設・運転開始した事業において、各電源と共通条件で比較評価した数値である。
エネルギー問題に精通しているシンクタンクの研究員は「第1ラウンド再公募と第4ラウンドの公募においては、36円/kWh以上での落札を許容する価格帯が必要だ。具体的な公募指針がようやく提示されたが、事業者にとって大変厳しいものとなった」と指摘する。30円/kWh程度の供給上限価格は事業者の投資意欲や、地元関係者の意欲に水を差す懸念が生じる。ノルウェーのエネルギー大手エクイノールが今年6月に、日本の洋上風力発電事業から撤退する意向を表明したが、国内市場の収益性の厳しさを象徴している。

30円程度の目安を
3海域すべてに適用しない
ただ、国としては供給上限価格30円/kWh程度を第1ラウンド3海域すべてに適用する方針ではないようだ。会合では今後の洋上風力導入拡大の方針について、「基本的には発電事業としての条件に優れ、コスト効率的に事業を実施できる海域から優先的に案件形成を進めることが望ましい」との考えを示している。
つまり第1ラウンド3海域の中で開発条件が優れていて最も低いコストで建設できる海域を供給上限価格30円/kWh程度で先行的に着手していくという方向性だ。
国は会合で「黎明期においては着実に案件形成を進め、産業基盤の確⽴によるコスト低減を図ることとし、コストの状況を継続的にモニタリングすることとしてはどうか。そのうえで、モニタリングの結果や他の電源とのバランスを踏まえつつ、案件形成の⽬安のあり⽅、産業基盤の構築、案件形成の進め⽅について、⾒直しを⾏っていくのはどうか」との考えも示した。当面は条件の良い海域で先行的に事業に着手し、建設コスト低減の見通しがついたら、他の海域も順次開発を進めていく。仮に建設コスト低減が想定通り進まなかったら、供給上限価格についてあらためて検討するという方針のようだ。
当然ながら、国の思惑通りに事業が進むかどうかは不透明だが、停滞している第1ラウンドの最低1つの海域だけでも、何としても再公募を開始したいという意向が読み取れる。
2027年度以降の
継続的な入札参加が不可欠
一方で同じ7月14日に経産省は電力安定供給ワーキンググループの会合を開いた。会合では2027年1月に開催される予定の長期脱炭素電源オークションで、洋上風力第2、第3ラウンド選定事業者の入札上限価格と募集枠が提示された。入札上限価格約41万円/kW/年で募集枠は50万kWである。関係者の評価では入札上限価格約41万円/kW/年は、採算を確保できるかどうか微妙な水準だが、事業撤退は食い止めることができるのではないかという。募集枠の50万kWは第2、第3ラウンドの事業すべてを満たせないので、2027年度以降の継続的な入札参加が不可欠となる。

PROFILE
松崎茂雄
エネルギー問題を20年以上にわたって取材。
独自の視点で国の政策に斬り込む経済ジャーナリスト。趣味は座禅とランニング。
WIND JOURNAL vol.11(2026年秋号)より転載










