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秋田県男鹿市のブレード破損事故で最終報告 全国の風車設置者に保安規程の再検討を要請へ

今年4月に秋田県男鹿市で発生した風車ブレード破損事故で発電事業者が9月25日、事故調査の最終報告書を公表した。事故の約1ヶ月前の落雷による損傷に気づかないまま運転を継続したことが原因という見方を示した。経済産業省は、全国の風車設置者に保安規程の再検討を要請する方針だ。

メイン画像:秋田県男鹿市の風の王国・男鹿風力発電所でブレードが破損(2026年4月)

<目次>
1.長期間にわたって 雷撃の有無を把握できず
2.自動停止閾値を下回り 詳細な点検ができなかった
3.事故メカニズムの解明と 現実的な運用を求める声も
4.全国の設置者に 保安規程の再検討を要請へ

 

長期間にわたって
雷撃の有無を把握できず

 

海沿いの河口にある事故現場、右端がブレード破損した風車

 
今年の4月12日、秋田県男鹿市にある「風の王国・男鹿風力発電所」の2号機において、稼働中の風車ブレードが破損し、部材の一部が周囲に飛散、落下する事故が発生した。事故発生当時、現場周辺の平均風速は毎秒9.7m、最大瞬間風速は毎秒12.2mで、風速自体は設計基準の範囲内であった。

発電事業者である株式会社風の王国・男鹿は、事故直後に男鹿市と経産省関東東北産業保安監督部東北支部へ報告を行うとともに、専門家と関係企業で構成される事故調査委員会を立ち上げて原因究明に着手した。経産省も事故後に現地調査を行い、事故機と同型の風車を設置する事業者に対してメンテナンス事業者による緊急点検への協力を要請した。

5月28日に公表された事故調査の中間報告では、破損したブレードの目視観察から先端部を中心に雷撃痕やガラス繊維強化プラスチックの黒化が確認され、破壊の要因が落雷である可能性が高いという見解を示した。さらに調査の過程で、過去に変圧器の故障に伴う所内停電が発生した際、約5ヶ月間にわたり風車が系統から解列して運転を停止し、その期間中は落雷検出装置が作動せず落雷データが欠損していたという事実も明らかになった。

事態を重く見た経産省は、国内すべての風車設置者に対して落雷の有無や点検の実施を緊急要請するとともに、8月6日には「発電用風力設備の技術基準の解釈」を一部改正し、日本海側の冬季雷区域においては、風車停止中の被雷把握や点検周期などを厳格化する方針を示している。
 

 

自動停止閾値を下回り
詳細な点検ができなかった

 

秋田県男鹿市の風の王国・男鹿風力発電所でブレードが破損(2026年4月)

 
9月25日に開催された第26回電気設備自然災害等対策ワーキンググループでは、事故調査委員会の最終報告書が公表された。最終報告書では、ブレード破損を引き起こした直接的な原因は、事故の約1ヶ月前の3月20日午後7時24分に発生した落雷とみられると結論付けている。この落雷は、本来雷を誘導すべき受雷部であるレセプター以外の箇所へ着雷する「異常着雷」であり、雷電流がブレードのシェルを貫通して内部に侵入したとしている。

内部放電に伴う熱エネルギーによって空気や水分が急激に膨張し、内圧の上昇を引き起こした結果、接合部や先端部に局所的な構造損傷が生じてブレードの強度および剛性が著しく低下した。しかし、事業者が設定していた落雷検出装置の自動停止閾値が「±100kAまたは300C」という数値であったため、3月20日の落雷(18.3kA、129C)では風車が自動停止せず、落雷後の詳細な点検が実施されないまま運転が継続された。

ブレード破損前の最後の点検となった4月4日の月例巡視においては、風車を回転させた状態のまま地上からの肉眼目視で点検を行ったため、ブレード表面に残されていた貫通痕を検出することができなかったという。こうして局所損傷を抱えたまま稼働を続けた風車に対し、4月12日の運転再開時に落雷後最大となる風荷重が作用したことで、強度低下を起こしていた部位が耐えきれなくなり、最終的な構造破断と部材の飛散に至ったと結論付けている。

これを受け、事業者は再発防止策として、落雷検出時の自動停止閾値を装置の設定可能下限値である「±1kAまたは1C」へと大幅に引き下げ、小さな落雷であっても風車を自動停止させて点検頻度を増やす運用を開始している。さらに、月例巡視や落雷停止後の点検においては、必ず風車を停止させた状態で望遠カメラやドローンを用いて高精度な外観確認を行い、ダウンコンダクターの導通測定によって電気的連続性を確認する体制へと見直しを行ったと説明している。
 

事故メカニズムの解明と
現実的な運用を求める声も

9月25日のワーキンググループでは、事故原因の捉え方や今後の保安運用に関して多角的な議論が交わされた。東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻講師の菊地由佳氏は、今回の事故分析が保守や運用の問題に帰着されている点について言及し、過去の他地域での事故例も引き合いに出しながら、日本特有の厳しい落雷環境における風車メーカーの破壊確率や設計強度そのものに問題がなかったか、設計段階における検証をさらに丁寧に行うべきであると指摘した。

静岡大学電気電子工学系列教授の道下幸志氏は、事故機で計測された雷電流値や電荷量の測定精度について技術的な観察結果との整合性を慎重に評価すべきだと述べ、落雷の大きさと破壊メカニズムの相関を明確にする必要性を強調した。一方で道下氏は、自動停止の閾値を極端に低い数値まで引き下げてしまうと、過度な風車停止が頻発して設備の稼働率が低下する懸念にも言及し、再生可能エネルギー導入拡大の必要性を踏まえて現実的な解を模索していくべきであるとの見解を示した。

株式会社資源総合システム取締役・首席研究員の貝塚泉氏は、事故後に対応する従来の保全手法から脱却し、気象情報を活用して事前に落雷リスクを回避する予防的メンテナンスの考え方を導入する重要性を説いた。また、ドローンによる撮影画像や人工知能を活用した解析技術、デジタルツインといった高度な技術を保守管理に取り入れるための支援の強化を要望した。

事業者として説明に立った株式会社風の王国・男鹿代表取締役副社長の菅原広大氏は、閾値設定の方法と今後の事故対策を説明した。菅原氏は、当面の間は安全性を最優先して装置の下限値まで閾値を引き下げる運用を採用し、今後の点検データの蓄積や運用実績に応じて適宜見直しを図っていく考えを示した。あわせて菅原氏は、風車を停止させた状態でのドローン撮影や導通測定の徹底により、目視では発見が困難な内部異常を早期に検出して重大事故を未然に防ぐ考えを明らかにした。
 

全国の設置者に
保安規程の再検討を要請へ

経産省は最終報告書の公表を踏まえ、全国の風車設置者に対し、電気事業法に基づき設置者自らが定めている保安規程の再検討を求める方針だ。具体的な要請内容としては、第一に、落雷検出装置を設置している風車において風車を自動停止させる雷撃の閾値を適切な水準へ再設定すること、自動停止装置を持たない風車においては気象情報を活用した雷接近時の事前停止措置などの代替策を規程に盛り込むことが挙げられる。

第二に、落雷を検出して自動停止した後は、必ず異常の有無を確認する点検手順を確立することである。第三に、定期点検や落雷後の点検から新たな被雷がない場合を除き、日常的な月例巡視点検においては必ず風車を停止させたうえで望遠鏡やドローンなどを用いてブレード表面の異常を確認し、その記録を保存することを徹底させるなどの対策を検討する。

近年の事故統計によると、風力発電所における事故のうちブレード損壊をはじめとする風車本体の破損は構外への影響や物損被害が大きい傾向にあり、その多くが落雷や保守不備に起因している。今後は、個別の事故から得られた知見を業界全体で横展開するとともに、風車設置者やメンテナンス事業者が講じる再発防止策の実施状況を国が継続してフォローアップし、持続可能な保安体制を構築していくことが重要な課題となる。
 

 

DATA

第26回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気設備自然災害等対策ワーキンググループ


取材・文/ウインドジャーナル編集部

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