注目キーワード

English 日本語

国内事例

シリーズ「再エネの未来」“とび職人”の強み活かし風車O&M事業へ。ブレード補修専用のゴンドラも提供

建設業から風車O&M事業に参入したインテック(福島県)。ブレード補修用のゴンドラのリースや風車の新設工事、定期メンテナンスなど幅広く活躍している。新規参入の経緯やGWOトレーニングの必要性について風力O&M事業部の丹野祥氏に聞いた。

(インテックと日綜産業が共同営業するブレードレスキューゴンドラ(BRG)。提供:株式会社インテック)

高所作業の経験豊富な建設業
風車ブレードの補修作業に着目


(風車のブレードは高速回転するため、雨などの影響で表面が削られ侵食される。これを『エロージョン』という。提供:株式会社インテック)

足場工事や仮設工事などを全国で展開するインテック(福島県)。近年は風車O&M事業に参入し、とびや土木作業という強みを活かして風車のメンテナンスに取り組んでいる。風力O&M事業部の丹野祥氏は、風車O&M事業に新規参入したきっかけをこう語る。

「新型コロナに負けない新規事業を探す中で、東日本大震災を経験した福島県が風力発電産業を推奨していることを知りました。今後、県内に数百基設置される計画のある風車のメンテナンスに着目し、当社は高所作業の得意なとび職人を多く抱えているため、風車のブレードの補修に取り組みたいと考えました」。
 

風車専用のゴンドラを提供
OJTでメンテ人材不足の解決も


(ブレードレスキューゴンドラ(BRG)の作業の様子。提供:株式会社インテック)

ブレードの補修に着目した同社だが、すぐにブレードメンテナンス事業に参入できたわけではない。同社では、日綜産業株式会社が開発した、風車に設置することでメンテナンス作業の効率を高める「ブレードレスキューゴンドラ(BRG)」を共同営業しており、そのリースを通じて風車O&M事業への参入を進めていったという。

ブレードメンテナンスに用いるゴンドラとは、一体どういうものなのか。「BRGは国内の基準を満たし、さまざまな風車で活用できます。設置コストや現地での組み立て時間は発生しますが、地に足がついた状態で作業できるため、ロープで吊り下げられたまま行うより作業の質の向上、作業時間の短縮が可能です」。

風車メンテナンスでは、海外の技術者が派遣されることもある。その際、複数人が乗れるゴンドラなら、技術者と通訳、作業員が乗り合わせてOJTを行うこともできるという。「国内のメンテナンス技術者不足は深刻です。BRGを通じて人材不足の課題を解決できれば」と丹野氏は力を込める。
 

「8メートルの衝撃」間近で
現場での危機管理能力高まる


(FOMアカデミーで行っている緊急時の脱出を想定した降下訓練。高さ8メートルは、3階建てのビルくらいの高さだ。筆者撮影)

丹野氏は、BRGを設置するにあたって、風車にのぼるための資格などを調べる中でGWO(Global Wind Organisation)トレーニングのことを知り、当初、遠方のGWO認証施設でトレーニングを受講していたという。しかし、同社が理事企業を務める「一般社団法人ふくしま風力O&Mアソシエーション(FOMアソシエーション)」が、GWOトレーニングを提供する「FOMアカデミー」を県内に創設したこと、県内企業のGWOトレーニングに県が助成を始めたことなどによって、受講しやすい環境が整ってきたと丹野氏は話す。

「FOMアカデミーのトレーニングでもっとも印象的だったのは、8メートルの高さから30kgの人形を実際に落としたときの衝撃。マットの上でも、ものすごい音だった。仮に生身の人間だったら、もっと高所だったらと考えるとゾッとした。高所の危険性を体で理解できたおかげで、現場での危機管理能力が高まったと思います」。

緊急時の脱出方法や負傷者の応急処置を学んだことも、現場で作業を行う際の安心感につながっているという。「マニュアル通りのトレーニングではなく、さまざまなシナリオでトレーニングを行い、楽しく学ぶことができた。受講前と比べて、万が一のときに仲間を助けられる自信が高まりました」。

大手風車メーカーは、風車にのぼるにあたってGWOトレーニングの受講を義務付けているが「実際にトレーニングを受けてみてその理由が理解できた」と丹野氏は振り返る。
 

実績と顧客の信頼積み重ね
全国へのさらなる展開図る


(インテックが行っている『建て方』と呼ばれる風車の新設工事の様子。提供:株式会社インテック)

風車専用のゴンドラをきっかけとして風車O&M事業に本格参入した同社は、徐々に「建て方」と呼ばれる風車の新設工事や、定期メンテナンスなども請け負うようになったという。

「目標は、風車メンテナンスを任せるのに『インテックなら安心』と言ってもらえるように実績と信頼を積み上げること。これまでも東北から九州まで実績があるが、全国へさらなる展開を図るため、社員全員がGWOトレーニングを受講して安全意識を高め、顧客の信頼を得ていきたい」と丹野氏は展望を熱く語る。


(インテックでは、GWOトレーニングを通じて緊急時の対応などを学び、安全に仕事ができるよう努めている。提供:株式会社インテック)

話を聞いた人

株式会社インテック
風力O&M事業部
丹野祥氏

 


取材・文:山下幸恵(office SOTO)


海外の大手メーカーで大型風車の建設からO&Mまでの作業全体に携わった、福島市FOMアカデミーのトップインストラクターを特別ゲストに迎え、より実践的な内容のセミナーをお送りします。大手風車メーカー出身者にしかわからない、長期稼働率保証の仕組みや新規参入に適した業種・業態について詳しく説明します。

関連記事

福島県庁
再エネビジネス塾

アクセスランキング

  1. 第7次エネルギー基本計画、年内に骨子案を固める 脱炭素電源の構成比率が焦点に...
  2. 【洋上風力第2ラウンド】長崎県西海市江島沖 第4回法定協議会を22日に開催...
  3. 北海道檜山沖、意見集約の原案提示「拠出金の8割を漁業振興、2割を地域振興に」 ...
  4. 【特集】洋上風力「第3ラウンド」の動向まとめ 青森、山形の2海域を徹底分析!...
  5. 【洋上風力第3ラウンド】事業者公募がきょうで終了 少数激戦へ
  6. 【洋上風力第2ラウンド】新潟県村上市・胎内市沖、18MW風車の配置計画図を公表「定期航路や油ガス田に配慮」...
  7. 【 参加無料 】12/12 WINDビジネスフォーラム ~ラウンド最新動向とサプライチェーン構築~...
  8. 【第2ラウンド深堀り解説①】第2ラウンド4海域 それぞれ別々の企業連合が選定事業者に...
  9. 洋上風力第2ラウンド「長崎県西海市江島沖」掘削工法で風車基礎を設置、洋上工事は五洋建設が担当...
  10. 環境省の浮体式促進事業 輪島市沖と北九州市沖の提案を採択

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.07 | ¥0
2024/9/11発行

お詫びと訂正