洋上風力を電源立地地域対策交付金の対象に 市町村連絡協が国へ要望
2026/03/31
全国の洋上風力発電施設の立地自治体や導入を目指す自治体で構成される「全国洋上風力発電市町村連絡協議会」(会長・斉藤滋宣秋田県能代市長)は3月25日、経済産業省、総務省、国土交通省を訪問し、洋上風力発電の着実な導入と地域振興を柱とした制度設計を求める要望書を提出した。特に、洋上風力を電源立地地域対策交付金の対象に加えることを強く働きかけた。
メイン画像:全国洋上風力発電市町村連絡協議会が要望書を提出(出典 新潟県村上市)
1.地域振興のカギを握る 「電産交付金」への組み入れ
2.事業完遂への予見性と 地域波及効果の担保
3.固定資産税の減収補填と 地方財政の安定化
4.官民連携による 「黎明期」の突破に向けて
地域振興のカギを握る
「電産交付金」への組み入れ

全国洋上風力発電市町村連絡協議会が要望書を提出(出典 新潟県村上市)
今回の要望活動においては、市町村協議会が「電源立地地域対策交付金(以下、電産交付金)」の対象に洋上風力発電を加えるよう明文化して求めたことが注目ポイントだ。現在、電産交付金は原子力発電や火力発電、水力発電、そして一部の地熱発電などの設置地点およびその周辺自治体に対して、地域の公共用施設の整備や地場産業の振興を目的として交付されている。しかし、再エネ主力電源化の切り札とされる洋上風力発電については、現時点でこの枠組みに完全には組み込まれていない。
市町村協議会がこの要望を最優先事項の1つに掲げた背景には、洋上風力発電が抱える「供給地と消費地の乖離」という構造的課題がある。洋上風力発電の適地は北海道や東北、九州といった地方圏に集中しているが、そこで生み出された膨大な電力の多くは、広域連系網を通じて首都圏をはじめとする大消費地へと送られる。市町村協議会は、地方が電力生産の拠点としての役割を担い、送電網整備に伴う負担を引き受ける一方で、その恩恵の多くが消費地に帰属する現状を是正すべきだと主張している。
要望書では、洋上風力発電を電産交付金の対象とすることで、大消費地が享受する恩恵の一部を生産地域に還元し、地域住民の理解促進と持続可能な地域運営を両立させる必要性を強調した。これは、単なる補助金の要求ではなく、洋上風力が真に「国家を支える主力電源」として機能するための、公的な制度的裏付けを求める動きといえる。
事業完遂への予見性と
地域波及効果の担保

洋上風力第1ラウンド「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」
要望のもう一つの柱は、洋上風力発電事業の着実な執行に向けた環境整備である。昨年8月に洋上風力第1ラウンド3海域において選定事業者が撤退を表明したことを受けて、立地自治体のあいだでは事業の継続性に対する不安が広がっている。市町村協議会は、事業者が長期的な収益確保の予見性を高められる制度構築を求めており、これには公募における評価方法の見直しや、FIP制度下での収益安定化策、さらには「長期脱炭素電源オークション」への柔軟な対応などが含まれる。
あわせて、市町村協議会は「地域への波及効果」の重要性を説いている。事業採算性の追求は不可欠であるものの、それが地域経済の置き去りを意味してはならないという立場だ。具体的には、国内の洋上風力関連産業の育成に資するだけでなく、地元企業の参画や雇用創出、さらには漁業との共生といった「地域に寄り添う姿勢」を、事業選定の評価軸としてより強固に反映させるよう求めている。
自治体側が危惧しているのは、風車が回っているものの、メンテナンス拠点やサプライチェーンの恩恵が限定的となり、地域に実質的な利益が落ちない「素通り」の状態になることである。これを防ぐためには、制度設計の段階で地域貢献の項目を単なる努力目標にとどめず、実効性のある仕組みとして担保することが求められている。
固定資産税の減収補填と
地方財政の安定化
さらに、実務的な課題として浮上しているのが、風力発電施設に係る課税標準の特例措置に伴う税収減の問題である。現在、再生可能エネルギーの導入促進を目的に、固定資産税の軽減措置(わがまち特例など)が講じられているが、これにより立地自治体には本来得られるはずの税収が入らない構造となっている。
地方交付税による補填措置は存在するものの、現状では地方自治体の実質的な持ち出しが生じているケースが少なくない。洋上風力発電施設は巨大な償却資産であり、その税収は自治体にとってインフラ維持や住民サービスを支える貴重な財源となる。市町村協議会は、国策として再エネを推進するのであれば、その税制優遇のしわ寄せを地方自治体が負うことのないよう、確実かつ十分な減収補填措置を整備・強化することを強く訴えた。
官民連携による
「黎明期」の突破に向けて
洋上風力発電は現在、まさに社会実装の黎明期にあり、技術的・経済的課題のみならず、法制度や地域合意形成のあり方が問われている。今回の要望は、立地自治体が単なる「場所の提供者」ではなく、事業の共同推進者として、相応の権限と利益還元を求めていく姿勢を鮮明にしたものだ。
今後、政府は第7次エネルギー基本計画の具体化に向けた議論を本格化させる。そのなかで、市町村協議会が示した「電産交付金の対象化」や「確実な税収補填」がどこまで反映されるかが、今後の洋上風力発電の普及スピード、ひいては2050年のカーボンニュートラル実現の成否を左右することになるだろう。自治体、事業者、そして国の三者が、足並みを揃えて実効性のある制度設計を完遂できるかが、これからの焦点となる。
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取材・文/ウインドジャーナル編集部









