注目キーワード

English 日本語

> 業界トピック

北海道大学 洋上風力人材育成の共通カリキュラムを新設へ

北海道大学は7月15日、同大水産学部(函館市)を拠点に、洋上風力発電の専門人材を育成する全学共通カリキュラムを新設すると発表した。今年度から一部を試行し、2029年度の全面実施を目指す。

メイン画像:大学の講義イメージ(画像:©Aggapom Poomitud /Shutterstock.com)

<目次>
1.洋上風力産業の 人材不足、人材育成が急務
2.再エネのポテンシャルが高い 北海道だからこそ実現
3.座学・フィールドワーク・研修の 一体型プログラムで即戦力に

洋上風力産業の
人材不足、人材育成が急務

 
政府が「2050年カーボンニュートラル」を掲げるなか、将来的な再生可能エネルギー事業を担う人材の不足が大きな課題だ。一般社団法人日本風力発電協会(JWPA)と株式会社三菱総合研究所の共同調査によると、洋上風力発電分野で2030年に15700人、2040年に38200人、2050年には48500人の人材が必要になると予測されている。また政府は、2040年に30GWから45GWの洋上風力発電設備の導入を目標に掲げており、現場を支える技術者や技能者の育成が急務となっている。
 


洋上風力発電事業における必要人材数(出典 一般社団法人日本風力発電協会)

 
函館市の北海道大学大学院水産科学研究院地域水産業共創センター(以下、北海道大学)は、北洋銀行(本店:札幌市)や北海道電力と連携して、大学生・大学院生向けの人材育成カリキュラムを新設する。

同カリキュラムは、「北海道洋上風力人材育成コンソーシアム」の一環であり、北海道での洋上風力産業の持続的な展開を目的としている。このコンソーシアムは北海道大学が中心となり、道内の産官学金(産官学と金融)が連携する人材育成組織として今年4月に設立、関連産業および地域・社会に必要とされる専門人材のシームレスな育成と確保のための教育カリキュラムの提供を目指している。
 


洋上風力産業に向き合う学生向け人材育成カリキュラムの新設について(出典 北海道大学)

 

 

再エネのポテンシャルが高い
北海道だからこそ実現

 
北海道は、風力発電・太陽光発電・地熱発電などの再生可能エネルギーにおいて、高いポテンシャルを有する。経済産業省の「電力調査統計」によると、2024年における北海道の再エネ比率は37.2%で、国の2030年目標(36〜38%)を上回る高い水準になっている。さらに、次世代半導体の製造拠点や大型データセンターなど GX・AI 産業の進出が相次ぎ、電力消費の観点からも脱炭素電源による安定的な供給力の確保が求められている。

しかし、洋上風力産業は1プロジェクトあたりの投資規模、関連産業の裾野の広さ、長期にわたる事業期間を要するため、ヒト・モノ・カネの面で莫大な投資と準備が不可欠となる。そのため、北海道大学では「北海道内の産官学金の関係者が持つリソースを結集し、洋上風力産業を支えるための体制構築を着実に進めていくことが重要だ」と人材育成の必要性を強調する。
 


洋上風力産業に向き合う学生向け人材育成カリキュラムの新設について(出典 北海道大学)

 

座学・フィールドワーク・研修の
一体型プログラムで即戦力に

 
このプログラムは、2026年度を準備期間としてプログラム組成に取り組み、来年度から一部施行し、2029年度の全面実施を目指す。

受講対象者は、当面は北海道大学の学部生、大学院生が対象だが、段階的に道内の他大学の学生、さらには道外の学生が受講できるよう範囲を広げる予定だ。カリキュラム組成は主に北海道大学が推進するが、北洋銀行と北海道電力はカリキュラム組成への資金援助や講師の派遣協力などに関わる。洋上風力産業は、電気・機械・土木・環境・気象・法律・行政・金融・経済など水産・海洋領域のみならず、多様な学問分野の総合知が必要とされる。そのため学問的な知識のほか、産業界の協力を得て、現場の実践知を織り込みながらプログラムを構成していく。

講義内容は、学びの段階に合わせたステップアップ方式を採用。学部1年〜2年はまずオンラインを主とした講義で、海洋・洋上風力の基礎を学び、その後フィールドワークを実施。学部3年〜修士対象者はより具体的な内容として、GX産業の知識を学ぶほか、企業インターンシップにも参加が可能となる。講義・フィールドワーク・産業の現場で、頭と身体をフルに活用して学びを深めるプログラムを構築していく。
 


洋上風力産業に向き合う学生向け人材育成カリキュラムの新設について(出典 北海道大学)

 
北海道大学では、このカリキュラムを受講した学生が、洋上風力産業に関する基礎知識や課題解決能力、関係者調整力などの汎用的能力を養い、卒業後に即戦力の人材となることを目指している。短期的に成果を求めるのではなく、長期的にプログラムの質を高めていくことになるだろう。卒業して社会に出てから学ぶよりも、在学中に学びを蓄えることで、即戦力として活躍できる点はタイムロスが少なく魅力的だ。「風の宝庫」である北海道を舞台にした産官学金連携の取り組みに注目している。
 

 

DATA

北海道大学 洋上風力産業に向き合う学生向け人材育成カリキュラムの新設について


取材・文/永見 薫
 

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.11 | ¥0
2026/9/9発行

お詫びと訂正

広告お問い合わせ

アクセスランキング

  1. 北海道檜山沖でセントラル方式の追加調査 事業性を再検討へ
  2. ベスタスとEcowendeがIPMA Awardsを受賞、プロジェクト実行力とパートナーシップを評価
  3. 北海道大学 洋上風力人材育成の共通カリキュラムを新設へ
  4. 韓国の海洋土木企業YUJOOのタイセル工法が実現する洋上風力のコスト構造改革
  5. 【洋上風力第1ラウンド】東京電力RPが千葉県銚子市沖で環境アセスを開始 再挑戦の背景とは
  6. 陸上風力の事業権取引で2億円詐取、事件の背景を徹底解説
  7. 【洋上風力第2ラウンド】国産初のモノパイル3基が秋田港に到着、本格的なサプライチェーン構築の第一歩
  8. 停滞する洋上風力第4ラウンド 日本の構造的な課題が一気に噴出
  9. 秋田県男鹿市のブレード破損事故で最終報告 全国の風車設置者に保安規程の再検討を要請へ
  10. 浮体式洋上風力の過酷環境実証が始動、国が海域公募を開始

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.11 | ¥0
2026/9/9発行

お詫びと訂正