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国内事例

【電材エンジニアリング】超大型風車の輸送・組み立て・据え付け・O&Mのワンストップ・サービス

世界最大級吊り上げ能力5000トン
世界最大級クレーン建造へ

――国内の浮体式洋上風力プロジェクトへの取り組みを教えてください。
日本で将来的に主力化すると言われている浮体式洋上風力の場合、洋上のサイトではなく、拠点港の岸壁付近で浮体式構造体の上に大型風力発電機を組み立てる必要があります。900トン以上のナセルや1000トン以上の地組タワーを吊り上げて、搭載しなければなりません。

このような作業ができるクレーンは世界的にも2~3台ほどしかなく、すべてヨーロッパにあります。もちろん、まだ日本には1台もありませんので、弊社で建造すること目指し、設計作業を進めているところです。今後、風車の超大型化が進んでいきます。20MW級の風車組み立てに対応するために、弊社は4000~5000トン級のクレーン開発を進めています。

――台湾での洋上風力プロジェクトについて教えてください。
当グループは現在、台湾で日本人やヨーロッパ人など、約35人の従業員が一丸となって洋上風力事業に従事しています。当グループが初めて参画した洋上風力プロジェクトが台湾苗栗県沖合のフォルモサ洋上風力発電プロジェクトのフェーズ2(2019年、発電容量12万kW、20基)です。シーメンスガメサ社製6MWの風力発電設備の運搬作業に従事しました。

台湾電力の洋上風力発電所建設工事にも2020年から参画しています。ヴェスタス社製9.5MW風力発電設備の運搬作業にも従事しました。弊社の主な業務は大型風力発電機の港内運搬、地組建て、そして、洋上での据付作業です。洋上風力の基礎部分を支える約76mある杭の運搬作業にも従事しました。

台湾だけではなく、ベトナムでも作業提供を行っており、これまで海外で培った実績と知見を日本のプロジェクト効率化にも生かしたいと考えています。

今後は建設だけでなく、AIなどの最先端テクノロジーを駆使した風力発電設備の保守運用管理システムを用いて、より効率的な運用をサポートしていきたいと考えています。具体的にはCMSと呼ばれるセンサーを風力発電機に多く取り付け、設備の稼働状況や振動、設備の温度などを24時間、365日監視し、将来の収益予想だけでなく、数か月先に発生するトラブルをAIにより特定し、予防措置を講じるというものです。これがDENZAI Data Careです。

来年秋までには川崎市とシンガポールにデーターセンターを建設・稼働開始させます。風力発電のベース電源化には、いかに安定的に発電し続けられるか、ということが重要です。風が吹いていないときに、AI(人工知能)によって特定されたトラブルを予防する措置を講じて、風が吹いているときは、絶対に風車を止めない、というのが欧州では鉄則です。経済産業省が公表している資料にも、日本の風力発電機の非稼働時間が欧州に比べて長いことが課題として提起されていますが、DENZAI Data Careがこの課題解決に貢献できると信じています。

他業界から洋上風力業界への
人材シフトに貢献

欧州ではかつて造船や鉄鋼、海洋油田向け拠点として栄えた港湾都市が、洋上風力の拠点となることで再興した実例があります。ドイツのブレーメンハーフェンやデンマークのエスピアノなどがよく実例として挙げられています。日本でも脱炭素化の流れにより、産業構造の転換が起きており、人材も新しい産業に転換していくことが重要です。

日本には鉄鋼業界や石油産業に従事している非常に優秀な技術者やエンジニアが多くいます。このような優れた人材が新しい産業、洋上風力産業に乗り移っていくことに貢献したいと考えています。22年秋に川崎市に完成予定のコントロールセンター「DENZAI Data Care Center Kawasaki」には風力建設・保守運用管理のトレーニングセンターも併設します。

国際認証資格の取得も可能な設備にする計画です。このようなトレーニングセンターは川崎市だけでなく、青森県八戸市や福島県南相馬市にも開設予定です。生産性が世界トップクラスの日本のブルーカラーは、わが国の最も価値ある資産の一つです。洋上風力分野で国際的競争力を持つためにも人材の転換は非常に重要で、この分野でも貢献したいと考えています。

洋上風力「一大拠点」目指す室蘭
地元の特性生かし地域活性化

――室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)の理事長としてMOPAについて教えてください。
MOPAは室蘭市が持つ、①天然の良港、②鉄鋼・造船産業の集積、③風力発電に適した風況──の三つを活用して洋上風力の拠点化を実現し、地域を活性化することを目的に活動しています。

室蘭は洋上風力建設の拠点港として活用できるスペックを兼ね備えた天然の良港であり、かつ古くから鉄鋼・造船産業が集積する北海道随一の工業都市です。また、「風の街」としても有名です。室蘭の風況は洋上風力発電にとても適しているとされ、国内外の事業者が注目しているエリアです。

これらを掛け合わせて、室蘭を洋上風力の一大拠点、すなわち洋上風力の建設用拠点港、洋上風力関連部材の製造拠点、さらには洋上風力発電事業拠点にすべく会員で協働するのがMOPAです。目下のターゲットは、東北エリアで開発が進む洋上風力発電事業の建設用拠点港として室蘭港を活用していただくことで、PR活動を展開しています。

PROFILE

電材エンジニアリング
代表取締役社長CEO
室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)理事長

上村浩貴氏

問い合わせ

株式会社電材エンジニアリング
神奈川県川崎市川崎区浅野町9番1号
TEL:045-328-4320
FAX:044-328-4374
MAIL:info@denzai-j.com


取材・文:山村敬一

WIND JOURNAL vol.1(2021年秋号)より転載

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