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洋上風力「第1ラウンド」はすべて三菱商事系が落札! 圧倒的な低価格の理由は?

背景に欧州再エネ事業者の買収か
高い経験値で大幅値引きが可能に

三菱商事グループが価格競争力の高い提案をできた理由として、同グループ傘下でオランダを拠点に総合エネルギー事業を展開するEneco(エネコ)の存在が考えられます。三菱商事とエネコは、2013年ごろから欧州の洋上風力発電プロジェクトで提携し、パートナーシップを築いてきました。2020年にはエネコを買収し、三菱商事が80%、中部電力が20%の株式を保有しています。

つまり、三菱商事グループによる今回の応札価格は、買収したエネコの欧州での経験などを参考にして決定されたのではないでしょうか。三菱商事は日本企業ですから、もちろん日本の風力発電事情に精通しています。一方で、エネコとの提携を通して、欧州の風力発電ビジネスについても多くを学んでいるはずです。

こうした経験値やサプライヤーに対するリーダーシップなどが、三菱商事グループによる3海域の落札につながったのではないかと推測しています。

地域共生という大きな課題
地元合意も評価できるシステムを

――今回の結果は、今後の洋上風力発電業界にどのような影響を与えるでしょうか。

今回の公募結果は、これから控えているラウンド2の公募にも影響を及ぼすでしょう。その1つに、地域共生という課題があります。例えば、事前に地元への合意を取り付けていた事業者が落札できなかった場合、地元の方々が納得できるのかという問題です。

地元の方々との合意とは、地道な協議を重ね、地元と事業者双方の未来がよりよくなると互いに納得してこそ実現できるものです。別の事業者に替わることで、地元の方々にとっても大きな影響が生まれるでしょう。

洋上風力発電が今後、拡大を続けるには地域との共生が欠かせません。こうした意識のもとに、第2ラウンド以降の公募に向けて、評価基準や評点のあり方を官民で再評価し、改善すべき点がないか議論を行う必要があるでしょう。

話を聞いた人

NPO法人 長崎海洋産業クラスター形成推進協議会
エグゼクティブ コーディネーター 兼 長崎海洋アカデミー講師
松尾博志氏

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