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動き出す浮体式産業育成と大水深実証。GI基金事業をテコに世界最先端の技術開発へ

日本政府は、浮体式洋上風力の量産化・大量導入に取り組んでいる。欧州企業にない強みを生かして、まずはアジア太平洋地域の市場獲得を目指してほしい。

メイン画像:2025年6月に稼働したフランス初の浮体式洋上風力発電所 Provence Grand Largeの建設現場

 

<目次>
1.NEDOの大水深実証 4月以降に対象海域を公募
2.高市政権が造船業支援 浮体式産業育成に追い風
3.浮体式の大量導入に東京都が積極的な姿勢

 

NEDOの大水深実証
4月以降に対象海域を公募

いまNEDOは、総額約2兆8000億円のグリーンイノベーション(GI)基金事業を手がけている。その基金のなかで、浮体式洋上風力の技術開発支援事業として「浮体式洋上風力における共通基盤開発」(事業予算40億円、実施者は浮体式洋上風力技術研究組合)で、大水深における設計などの技術開発を進めている。この成果を活用して、実海域における実証を展開する。実海域での実証は、「過酷環境下における浮体式洋上風力実証」の公募で選定された海域の、水深500m以深の海域で実施することを想定している。

資源エネルギー庁は、公募要件の案として、①利害関係者が特定され、実証への理解が得られていること、②将来、隣接する区域で促進区域化を目指していること、③海象要件(風速、波高、水深など)、④条例で設置許可を行うこと、⑤実証事業後はテストフィールド化に同意することの5点を示している。今年4月以降に詳細な公募要件を決定し、対象海域の公募を開始する予定だという。そして今年秋ごろに対象海域で実証を実施する発電事業者の公募を開始する見通しだ。
 

 

高市政権が造船業支援
浮体式産業育成に追い風

昨年の通常国会で改正再生エネ海域利用法が成立し、今年4月から排他的経済水域(EEZ)で浮体式洋上風力発電の設置・運用が可能となる。領海を超えた深い海域において、国が指定した区域で、最大30年間の事業権利を認める2段階の許可制度を創設し、2040年の電源目標達成と産業育成を目指す。

ただ浮体式洋上風力の分野において、量産化・大量導入の関連技術は、世界的にみてもまだ確立されていない。例えば英国は港湾が整備されているが、製造拠点が十分ではない。オランダは港湾や設置の技術を持っているが、浮体製造の技術開発が進んでいない。フランスは浮体製造が可能だが、港湾整備は途上の段階だ。

浮体式洋上風力を製造から設置まで一気通貫でスムーズに実施できる国は、実は非常に限られている。もともと欧州は欧州連合(EU)として水平分業を行い、国ごとに役割分担をしている。そのため、欧州全体をひとつのまとまりとして見ると、オイル&ガス産業で培われた技術的蓄積があり、浮体式の技術開発につながる強みを持っている。

一方、日本もGI基金事業をテコに世界最先端の技術を実用化する可能性を秘めている。日本の強みは「ものづくり」であり、この点は欧州の国々も注目している。かつて日本の造船業は、非常に大きな産業だった。現在は縮小しているが、それでも瀬戸内、九州エリアを中心に造船業は根強く残っている。これに加えて、鉄鋼業をはじめとする素材産業も日本の大きな強みで、こうした「ものづくり」の優位性を浮体式の産業分野で十分に発揮できる余地がある。

高市政権は、現在策定している成長戦略のなかで、造船業を支援する姿勢を明確にしている。これは、浮体式の技術開発に大きな追い風だ。造船ドックそのもので浮体構造物を製造するのは難しいが、溶接技術をはじめとする人材が育っていけば、浮体構造物の製造コストは下がっていく。そうなれば、日本の競争力が高まり、国内市場だけでなく、より広い世界市場を視野に入れることができる。

アジア太平洋地域に目を向ければ、フィリピンやベトナムなどでは、日本企業が現地の浮体式洋上風力プロジェクトに参画する動きがみられる。日本がうまく立ち回れば、アジア太平洋地域全体を市場として取り込むことが期待できる。

しかし課題はある。浮体式洋上風力の未来について、業界関係者は、「最後に残る最大の課題は、搭載する風車をどうするかという点だ。ぜひ国を挙げて、この問題に本腰を入れて取り組んでもらいたい。海外の風車メーカーに、半導体分野のTSMCのように、日本国内に工場を建設してもらうことも一つの方法だ」と指摘する。

浮体式の大量導入に
東京都が積極的な姿勢

浮体式洋上風力の大量導入に向けては、東京都が積極的な姿勢をみせている。小池知事は、伊豆諸島沖で100万kW規模の浮体式洋上風力発電所の開発を目指している。昨年6月には、伊豆諸島の大島町沖、新島村沖、神津島村沖、三宅村沖、八丈町沖の5海域が再エネ海域利用法に基づく準備区域に整理された。

東京都は、伊豆諸島の5町村で地域研究・検討会議を開催している。大島町では、海底地盤や漁業実態調査に取り組んでいる。都は26年度当初予算案に、浮体式洋上風力導入推進事業として前年度の3倍の27億円を計上して、伊豆諸島沖の事業化を進める考えだ。

伊豆諸島には、本土につながる送電ケーブルがないため、東京電力の系統から独立している。東京都気候変動対策部は、「送電ルートの確保については、あらゆる手法を視野に入れて検討していきたい」と話している。
 

 

PROFILE

松崎茂雄

エネルギー問題を20年以上にわたって取材。独自の視点で国の政策に斬り込む経済ジャーナリスト。趣味は座禅とランニング。


WIND JOURNAL vol.10(2026年春号)より転載

取材・文/ウインドジャーナル編集部

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2026/3/17発行

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