遊佐沖の洋上風力、次々に行われる環境アセスメント。最大のテーマは地域共生か
2022/08/02
洋上風力発電事業の有望区域に選定された山形県遊佐町沖では、多くの事業者が環境アセスメントの手続きを進めている。一方で、地域住民や海域利用者などで構成される検討部会では、自然環境や景観への影響を懸念する意見が寄せられた。
10回の会合で地域への影響を議論
渡鳥への懸念や周知不足の指摘も
2021年9月、再エネ海域利用法の「有望な区域」に選定された山形県遊佐町。県の最北部に位置し、鳥海山や庄内平野といった自然に恵まれた人口1万3000人余りの町だ。
遊佐町では、町内沿岸域を対象とした「山形県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議 遊佐沿岸域検討部会」を2018年に設置し、洋上風力発電を導入する場合に予想される地域への影響や課題について議論してきた。同部会は、地域住民の代表をはじめ、山形県漁業協同組合などの海域利用者、有識者や経済団体、電気事業者、行政機関など30名ほどのメンバーによって構成される。これまでに10回の会合が開催された。
2022年5月には「遊佐町沖における洋上風力発電に関する住民説明会」が行われ、経済産業省と環境省が登壇した。
経産省は、洋上風力発電の設置により、エコツーリズムなど観光資源・環境学習の場に活用できるほか、海中では、設備の基礎などに水生生物が集まる“魚礁効果”により、新たな漁場の創出が期待されると説明した。環境省は、環境への影響を評価する環境アセスメントの手続きについて説明を行い、地域住民も事業の検討に間接的に関与できることを強調した。
その一方で、これまでの検討部会では、洋上風力発電の自然環境や景観に及ぼす影響を懸念する地域住民の声が多く寄せられている。一例を挙げると、風車の影による住環境への影響や、渡鳥や海底の湧水に与える影響などだ。また、地域住民への周知や公表が足りないとする指摘もあった。
遊佐沖で続々と始まる環境アセス
地域との合意形成が焦点に
遊佐町沖の洋上風力発電事業については「遊佐沖洋上風力発電に係る環境アセスメント共同実施コンソーシアム」による環境アセスメントの手続きが進められている。同コンソーシアムは、山形県酒田市に本社を置く土木・建築工事会社の加藤総業が代表者を、コスモエコパワーが事務局を務め、以下の20社によって構成されている。
(出典:コスモエコパワー)
さらに、同コンソーシアムのほかにも、中部電力や東京電力リニューアブルパワー、日本風力開発、伊藤忠商事などが、同地域で環境アセスメントの手続きを開始している。地域共生を前提とする洋上風力発電事業において、事業者がいかに地域との合意形成を図るかにスポットが当てられている。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)