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洋上風力「促進区域」の8市町が協議会、「漁業との共生」や雇用・地域経済発展に期待

8市町の会見での
主な発言

秋田県能代市・齊藤滋宣市長
すべての地域がいろいろな課題を抱えていると思う。その課題解決を考えた時に、私の町では戦後2回の大火があった。町の半分以上が焼けるような災害だった。これはひとえに厄介者と言われた風の仕業だった。しかし、この風力発電が、いわゆる今のカーボンニュートラル、CO2を削減するということで国是になってきている。非常に風の強いことが、追い風になったと思っている。だから特色ある町作りをするためにも、この風をうまく活用しながらしっかりと町作りをしていくことがこれから求められていく。そして環境に優しい町作りにつながると思っている。

――電波新聞:協議会をどのような場にしていきたいのか?

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
それぞれが手探りしながら、洋上風力をそれぞれの地域の活性化、町の活性化につなげていかなければならないと思っている。今回6市2町がこの協議会に参加して、それぞれの特色のある風をどう活用していくかということで、共通の課題を持っている。情報交換しながら互いに切磋琢磨し、勉強しながらプラスになるよう、風力をそれぞれの地域の発展につなげていくような体制をしっかりと作っていきたい。

――参加する自治体を増やしていくのか?

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
おそらく、まだまだ風況の良いところあるので、風力発電に関心のある地域にご案内して、協議会のメンバーを増やすことができたらいいと思っている。

――促進区域などの指定を受けている自治体に参加を呼び掛けるのか?

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
例えば、日本海側の場合は北陸から北海道まで非常に風が良いと言われているから、今回声が掛かっていない地域でも、風力発電に関心を持っている市町村がある。そういったところに呼び掛けていこうと思っている。

――それぞれの地域で取り組み状況も違うと思うが、「漁業との共生」という観点で、どのような課題認識を持ち、どのように取り組んでいるのか?全首町にお答えいただきたい。

秋田県三種町・田川政幸市長:
われわれは水産業、正直言って砂浜がメインなので、漁樵などに期待している。漁業組合も頑張っているが、現在、漁業がメインの収入源になっている方が少ない状況だ。今後、洋上風力ができれば漁樵などで期待ができると考えている。漁業組合も、まずモニタリングで協力したいという意向だ。なので、それをわれわれもしっかりと受け止めて、施策をしっかりまとめていきたい。

千葉県旭市・米本弥一郎市長:
千葉県旭市の飯岡漁港は、千葉県第2位の漁獲高を持つ。漁業者の皆さんにとって初めてなので若干心配しているようだが、着床式の風車が漁樵にもなって、新たな魚種が増えることもあろうかと思っている。漁協の皆さんと互いに共通認識を持ちながら進めていきたい。

千葉県銚子市・越川信一市長:
銚子市は漁業の水揚量で11年連続の日本一ということで、洋上風力では何よりも「漁業との共生」が絶対条件だと考えながら今まで進めてきた。具体的には漁業組合が中心になって漁業共生センターを作った。そこで海底や海の状況の調査を(風力発電の)着工前からしっかりやっている。それがどういうふうに変化していくのか、それから漁樵なども、もちろん政策的な形で進めていくということで、(漁業関係者と風力発電事業者が)互いにウィン・ウィンの関係になるよう計画を進めている。

長崎県五島市・野口市太郎市長:
五島市は唯一の離島であり、風力発電も浮体式で進めている。すでに1基が実用化している。平成20年(2008年)ごろから環境省の実証事業として進めてきた。漁業との関係ではどうしてもいろいろな不安などが出てくるので、計画段階からしっかり情報提供する中で、一緒にテーブルに着いていただいて話を進めている。その中でいろいろな疑問や不安が出たら皆で解決するという形で取り組んでいる。促進区域に設定された福江港ではすでに洋上風力の製造が始まっている。いろいろな経過を含めてしっかり水産関係の方とはうまく情報共有している。漁業振興については、先ほどから漁樵効果というお話もありましたけども、間違いなく漁樵効果があると思っており、実際に漁師さんに見ていただく。(漁業と)共生しないと、たぶん普及はないと思っており、しっかり取り組んでいく。

秋田県由利本荘市・湊貴信市長:
由利本荘市にもいくつか漁協があるが、当初、洋上風力発電の計画の話が出た時、やはり漁業関係者が大変不安を感じており、私にもかなりの相談があった。いろいろと調査していく中で、漁樵効果としては非常に高い可能性がある。ハタハタなどがずっと獲れてきていたのだが、最近なかなか、獲れたり、獲れなかったりと、不安定なところもあり、今回の洋上風力が、一つの安定した漁業の産業としてやっていけるのではないかということで、大変期待をしているところだ。漁業者の方々も今、ほとんどの皆さんが「ぜひ一日も早く」と積極的に進めているところだ。

秋田県男鹿市・菅原広二市長:
男鹿市は秋田県の漁獲高の半分以上があるところだ。ハタハタをはじめ漁業の停滞は著しいものがある。何とか洋上風力をきっかけに、スマート漁業によって、作り育てる漁業を進めていけないかなと期待している。そしてまた、ブルーカーボンの育成が地球環境にも良いことだと思っており、その振興を期待している。

秋田県八峰町・森田新一郎市長:
秋田音頭という秋田民謡があるが、その中で「秋田名物、八森ハタハタ」と言われるぐらい、秋田県の魚に指定されているハタハタをPRしている。今回の洋上風力発電の話があった時には、漁業者の皆さんは、ハタハタがいなくなるのではないかという心配をしていた。それで、再エネ海域利用法ができて、洋上風力発電事業者が、自分が建てたいところに風車を立てるのではなくて、海のことを一番分かっている漁業関係者もこの協議会に入って、「ここのエリアだったら一番影響が少ないよ」というふうな促進区域の中で洋上風車が建っていくので、漁業者の皆さんも比較的安心している。しかし、それでもやはり何もないところに(風力発電所が)建つわけだから、何らかの影響が出てくる可能性があるので、事前と事後の調査をしっかりしながら、漁業者と発電事業者の皆さんのマッチングも含め、調整を図りながら漁業振興に努めていきたい。

秋田県能代市・齊藤滋宣市長:
能代市では港湾区域内に20基を建設することになっており、日本に来ている日本籍作業船「Seajacks Zaratan」(シージャックス ザラタン)を使って今、建てている。今8基目の工事に入った。20基を港湾区域内に建てる予定で、もうトラジションピースは建っており、そこに風力発電を建てる工事を今、ザラタンでやっている。今、秋田港に置いてある部材をザラタンが4基ずつ持ってきて、作っているところだ。おそらくこのあと一般海域でも工事を進めていくことがほぼ決まっているので、5年後ごろまでに商用開始を目指して頑張っていきたいということで計画を立てている。いずれにしても、風力発電をメインにしたエネルギーの町を標榜しており、港湾区域ならびに一般海域でも、日本のフロントランナーとして、皆さまの先鞭を切って風力発電に真摯に取り組んでいきたい。もう一つ、洋上風力の一番の課題は何と言っても「漁業者との共生」だと思っている。御多分にもれず、能代市でも、非常に資源量が落ちているから、漁業者の皆さんがご苦労されている。ですから、こういう現状に鑑みて、「獲る漁業から作る漁業への変換」をすることによって、漁業者の皆さんが、もう一度漁業というものに魅力を感じるきっかけになり、洋上風力発電の振興につながり、さらには漁業者の皆さんが「あらためて協業に取り組んでいこう」という意欲を持てるようにしていきたい。いろいろな漁業の振興策を考えているが、風力発電を建てようとする皆さんと話しながら、漁業者の皆さん方に少しでもお金が回るよう、事業者の皆さんから捻出していただいて基金を作って活用できないかという勉強も今やっている最中だ。漁業をされている皆さんには大変ご心配を掛けているが、互いにウィン・ウィンの関係になるようしっかり努力していきたいと思っている。

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