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国内事例

丸紅 秋田洋上風力発電の設置大詰め 年内に商業運転へ

海面からの高さは約150m。40階建てのビルとほぼ同じ高さの風車が海の上に立ち並ぶ光景に思わず息をのんだ。国内で初めての商業運転を目指す大型洋上風力発電の建設が秋田県沖で大詰めを迎えている。公募開始から8年をかけて進められてきた発電所が年内に商業運転を開始する。(画像: 秋田市沖に設置された洋上風車)

秋田県沖に
33基の風車を設置

秋田市沖で行われている風車の設置工事

「このあたりには石炭火力発電所がつくられるはずだったけど、いつの間にか風車だらけになってしまった。魚釣りにはどんな影響があるのだろうか?」近くの岸壁で釣りをしていた白髪の男性が、洋上の作業船を見つめながらつぶやいた。

洋上風力発電所の建設が進められているのは、秋田市沖と能代市沖の2か所。大手商社の丸紅を主体に、大手電力会社や建設会社などが出資する秋田洋上風力発電(秋田市)が事業を進めている。設置される風車は、海底に土台を固定する「着床式」。能代市沖では8月下旬に20基の風車が完成し、いまは秋田市沖で残りの13基の風車の組み立て作業が行われている。

陸上工事は2020年3月から2021年9月まで。洋上工事は2021年3月から2022年11月に工事が完了する予定だ。(工事状況はHPで確認できる) 大型のクレーンを搭載した作業船が、海底に打ち込んだくいに柱を設置してから、発電機が入るナセルや風車の羽根(ブレード)を取り付け、風車を完成させる。24時間態勢で作業し、1日1基のペースで風車をつくり上げていく。記者が現場を訪れたのは今月18日。台風14号の影響が心配されるなか、秋田市沖の事業区域の北側で、風車の組み立て作業が進められていた。現場近くの海岸線は、風力発電の導入を積極的に推し進める秋田県のシンボルとも言えるエリアだ。秋田市から隣接する潟上市にかけて、約10キロにわたって高さ約130メートルの陸上風車が計39基並んでいる。このうち「A―WIND ENERGY」(潟上市)が北側17基、「秋田潟上ウインドファーム合同会社」(同市)が南側22基を運営している。

約10キロにわたって設置されている陸上風車

この日は3連休の日曜日。家族と一緒にバーベキューを楽しんでいた会社員の男性が、洋上の作業船を遠巻きに見つめながら記者に語りかけた。「この洋上風車が秋田にどれくらいのカネを落としてくれるのか?秋田の経済が良くなるためには、洋上風車を活用した新たな仕掛けが必要だ」―――――。

国内初の商業運転
一般家庭13万世帯分の電力供給

クレーンを搭載した作業船

日本海に面した秋田県は、年間を通じて風況が安定していることから、国内でも有数の風力発電の適地と言われている。NEDO再生可能エネルギー技術白書によると、風力発電の事業化の目安は年平均風速 7m/s以上とされるが、秋田市沖では年平均6.5~7.5m/s、能代市沖では7.0~7.8m/sの風速が確認されている。これをうけて秋田県が2014年に事業者の公募を行い、応募した2事業者を検討した結果、2015年に丸紅が事業者として選定された。

国内初の商業運転を目指す大型プロジェクトで、総事業費は約1000億円。秋田県沖では、去年5月に洋上での基礎工事が開始された。デンマークの風車メーカーのベスタスと三菱重工業との合弁会社であるMHIベスタス製の風車を採用している。1基あたりの発電能力は約4,200kW。総出力は約14万kWで、一般家庭約13万世帯分の電力を供給する計画だ。

秋田県
再エネを活用した工業団地を整備

未利用の県有地を部品の一時保管場所に

秋田市沖の洋上風車設置工事は、長年にわたって未利用だった県有地を活用して進められている。この土地は、秋田県が1991年に大手製紙メーカーの工場を誘致するため、秋田港北側の65ヘクタールの海域を埋め立てて整備した。しかし、2000年に製紙メーカーが進出を断念し、広大な埋め立て地の利活用が大きな課題となっていた。2015年に大手商社と大手電力会社が47ヘクタールの敷地に石炭火力発電所2基(計130万キロワット)の建設計画を発表したが、CO2 排出に批判的な国際世論の高まりをうけて去年4月に新設を断念した経緯がある。秋田市沖の洋上風車設置工事では、埋め立て地が風車などの部品の一時保管場所として活用され、専用岸壁が作業船の寄港地になっている。

人口減少と高齢化が進む秋田県に、洋上風力発電が何をもたらしてくれるのか。秋田県は、100%秋田県産再エネを活用した工業団地を整備する方針を打ち出している。洋上風車の近くに広がる未利用の埋め立て地は、脱炭素の流れに翻弄されながら静かに出番を待っている。


取材・文/高橋健一

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