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【第2ラウンド動向】長崎県西海市江島沖の公募の行方

経済産業省と国土交通省は12月28日、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の2回目の公募を開始した。秋田、新潟、長崎の計4海域が対象で、23年6月30日まで応募を受け付ける。このうち「長崎県西海市江島沖」にはこれまでに欧州の再エネ事業会社や大手商社など2つの事業体が参入の意思を表明している。

絶景の離島を囲む海域で
洋上風力発電事業


「長崎県西海市江島沖」の促進区域(出典 経済産業省)

「長崎県西海市江島沖」は、長崎県西彼杵半島の西方沖にある江島を囲む海域。促進区域の面積は3983.8ヘクタールで、最大出力は42万4000キロワット。22年12月28日から発電事業者の公募を開始し、23年6月30日まで受け付ける。国による審査や第3者委員会による評価などを経て、24年3月までに発電事業者が決まる見通し。

「長崎県西海市江島沖」は、20年7月に洋上風力発電の「有望な区域」に選定された。長崎県や西海市、漁業関係者、有識者などで構成する法定協議会は、発電施設を活用した地域振興、漁業操業や船舶航行への影響などについて議論した。その結果、22年5月「海域の先行利用の状況に支障を及ぼさないことが見込まれるとして、促進区域として指定することに異存はない」との意見をまとめている。

協議会では留意事項として、発電事業による漁業への影響について十分に配慮するため、選定事業者は少なくとも建設工事の1年程度前から漁業影響調査を開始すること。島内居住者に対する騒音などの影響を防止する観点から、江島島内の住宅から800メートル以内の海域には洋上風力発電設備など(海底送電線などを除く)を設置しないこと。世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産からの眺望について、関係機関と十分な協議を行うとともに、選定後すみやかに遺産影響評価を行ったうえで、世界文化遺産の「顕著な普遍的価値」に影響しない事業計画とすることを求めている。「長崎県西海市江島沖」は、22年9月に洋上風力発電施設を優先的に整備する「促進区域」に指定された。

これまでに2事業体が
参加表明

「長崎県西海市江島沖」には、これまでに2つの事業体が参入の意思を表明し、環境影響評価の手続きを進めている。このうち、ジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)は17年12月に事業計画を公表した。21年9月にドイツの再エネ事業会社、wpd AGが資本参加している。JREは12年8月に設立された再生可能エネルギーのスタートアップ企業。22年1月に石油元売り最大手のENEOSに買収された。洋上風力発電公募の「第1ラウンド」には応札しなかった。同社は16年から江島沖の関係者と交渉を開始し、「秋田県八峰町、能代市沖」でも17年から地元との関係構築を進めている。

電源開発と住友商事は、19年8月に参入の意思を表明した。江島は、住友商事のグループ会社、大島造船所(西海市)とのつながりが深い地域でもある。住友商事は、「新潟県村上市、胎内市沖」でも環境影響評価の手続きを進めている。電源開発は、第1ラウンドではJERAなどとともに秋田県の2海域に応札している。

「長崎県西海市江島沖」は離島を囲む海域で、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に近い。さらに同海域は、海底の地盤が岩盤であることから、基礎工法にモノパイル式の採用が困難で、海底に4本の杭を打つジャケット式を採用することが想定されている。1本の杭で支持するモノパイル式に比べて、ジャケット式はコストが高いのが課題だ。こうしたことから、上記の2事業体が事業計画を公表したあと、これまで3年以上にわたって新規参入の動きが表面化していない。今後は、地元の九州電力グループや、長崎県五島沖で事業を進めている企業の動きを注視していきたい。


取材・文/高橋健一

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