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【商船三井】洋上風力バリューチェーンへの幅広い貢献を目指す

今年1月、風力発電メンテ国内最大手の「北拓」と資本提携を行い、業界の話題をさらった商船三井。同社は昨秋にも、浮体式洋上風力のパイオニア「Odfjell Oceanwind AS」に出資参画するなど、体制強化を進めている。商船三井は、洋上風力の世界で何を成そうとしているのか? 風力発電事業の指揮をとる執行役員の杉山正幸氏に聞いた。

▲ 商船三井はノルウェー・Odfjell Oceanwind AS社にも出資参画し、浮体式洋上風力発電におけるプレゼンスを高めている。(写真は、Odfjell Oceanwind社が開発するDeepsea Star™の設置イメージ図。)

北拓のノウハウを吸収し
O&Mを風力事業の柱に

商船三井は、2017年にSeajacks社(英国)を通じて洋上風力発電設備設置船事業に参画して以来、SEP船やSOV事業などを柱に、船会社として国内外の洋上風力プロジェクトを支えてきた。2021年に風力エネルギー事業部を立ち上げてからは、立地環境調査や基地港湾コンサルティングなどにも積極的に取り組み、洋上風力バリューチェーンへの幅広い貢献に努めてきた。

北拓との資本提携は、その先を見据えた大きな布石となるものだ。杉山氏は、その意義と狙いを次のように話す。

「私たちは、洋上風力を次世代の事業の柱にしていきたいと考えています。そのコアになるものの1つがO&Mです。北拓は特定のメーカーや発電事業者に属さない国内最大のサードパーティ系メンテナンス企業であり、日本に建設されている陸上風車約2600基のうち約80%にサービス提供しているリーディングカンパニーです。一方、弊社には、海に関する140年以上の歴史とロジスティック領域における強み、そして国内外の洋上風力プロジェクトで得た知見があります。これらを掛け合わせることで、洋上風力発電O&Mにおけるワンストップサービスを実現していきます」(杉山氏)。


商船三井 代表取締役 社長執行役員 橋本剛氏(左)、北拓 代表取締役社長 吉田ゆかり氏
 

 

国内外に訓練センターを設け
メンテナンス要員を育成

風力発電設備の安定した運転を支えるためには、長期間にわたる適切なメンテナンスが必要不可欠だ。これまで北拓は、自社でトレーニング・実証研究用の風力発電設備を所有するなど、競争力の源泉であるメンテナンス技術要員の育成にも注力してきた。洋上風力発電用のトレーニング施設も、北九州に建設中だ。

商船三井もまた、作業船を定点に留めおくDP(ダイナミックポジショニング/自動船位保持)オペレーターを育てる訓練センターを開設するなど、人材育成に努めてきた。さらに同社は、フィリピンに商船大学を開校(2018年)するなど、海外人材の育成にもノウハウをもつ。洋上風力のメンテナンス要員についても、海外育成を視野に入れているという。

「現在、外航船の乗組員は、外国人が9割以上を占めています。洋上風力のメンテナンス要員に関しても、国内の人材だけでは足りなくなることは明らかです。もちろん、国内での人材育成が最優先となりますが、将来の人手不足に備えて海外人材の育成にも取り組んでいきたいと考えています。メンテナンストレーニングについても北拓と連携し、人材育成の面からも洋上風力産業の発展に貢献していく方針です。」(杉山氏)。

船会社の知見を活かし
浮体式の発展に取り組む

杉山氏は、将来的には、洋上風力の中でも、とくに浮体式を伸ばしていきたいと述べている。

「弊社の本業は、船を発注して、造船所の方々と一緒につくっていくことから始まります。パーツやモジュールをそれぞれの場所でつくり、それを運び、アッセンブルして、また海に浮かべるというロジスティックスの知見も蓄積されています。そこには、洋上風力の浮体に通じるものがあります。浮体こそ、我々の存在意義を発揮すべき領域だといえるでしょう」(杉山氏)。

商船三井は昨年10月、浮体式洋上風力発電技術および浮体式洋上風力プロジェクトを開発するノルウェーのOdfjell Oceanwind AS社に出資参画した。同社の浮体設計技術は、過酷な海象条件エリアを含む様々な海域において、未だ世界で設置事例のない15MW以上の風車をも設置可能とするもの。2035年までに合計50GW以上の大型浮体式洋上風力プロジェクトへの採用が見込まれている。商船三井としては、同社のパートナーになることでヨーロッパでの経験を重ね、そこで得たノウハウを日本の浮体式洋上風力に活かしていきたい考えだ。

 

パートナー企業とともに
脱炭素化への貢献を目指す

「弊社は、今後も風力発電各分野のパートナー企業との関係を強化し、洋上風力バリューチェーンへのいっそう幅広いサービスを提供していきます。国内においては、ラウンド3、ラウンド4への参画要請にも積極的に応えていく方針です。また、将来的には、日本での知見をアジア各国の洋上風力プロジェクトにも展開していきたいと思っています。これまで海運会社として化石燃料を大量に消費してきた我々にとって、脱炭素化への貢献は避けることのできない使命でもあります。風力業界の皆様とともに、その使命を果たすことができれば幸いです」(杉山氏)。

 

PROFILE

株式会社 商船三井
執行役員
電力ソリューション・石炭船事業 風力発電事業 担当

杉山正幸氏

問い合わせ


株式会社商船三井
〒105-8688 東京都港区虎ノ門2丁目1番1号
TEL:03-3587-7117


取材・文:廣町公則

WIND JOURNAL vol.6(2024年春号)より転載

Sponsored by 株式会社商船三井

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