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北海道松前沖法定協、促進区域の指定に同意 漁業者への配慮が条件

経済産業省、国土交通省、北海道は7月31日、松前沖の第3回法定協議会を開催した。ヤリイカ漁の時期に工事を休止することなどを条件に、促進区域の指定に同意した。

<目次>
1.水深60mエリアまで想定区域を拡大 工期の調整や騒音対策を求める
2.漁業や環境への措置を漁業・地域振興の「松前モデル」に

 

水深60mエリアまで想定区域を拡大
工期の調整や騒音対策を求める

松前沖

北海道松前沖の促進区域案(出典 経済産業省)

北海道松前町の法定協議会は、経産省、国交省、北海道、松前町、松前さくら漁協、学識経験者などで構成される。会議では、松前町と松前さくら漁協の提案で、想定区域を現在の水深50m程度までのエリアから、松前さくら漁協が単独で有する共同漁業権内の水深60m程度まで拡大する計画を国に再提出したと事務局が報告した。これに伴い、想定区域は、従来の2300haから3710.4haに拡大する。

また、松前町の特産であるヤリイカの産卵期が2〜5月であることから、基本的にこの時期は工事を休止すること、主要な魚種であるマグロの漁期にあたる7〜1月は、建設工事による振動や騒音による影響を低減する取り組みを実施する案が事務局から示された。

工事の振動や騒音を軽減する対策としては、海外で先行している「ダブルビッグバブルカーテン(DBBC)」などの実施を選定事業者に求めるとしている。これは、海底に沈めたリングから出す泡で工事箇所を囲み、泡のカーテンのようにして周囲への騒音の軽減を図るものだ。

漁業や環境への措置を
漁業・地域振興の「松前モデル」に

さらに、選定事業者の過失により漁業へ支障を及ぼしたことが客観的に確認された場合は、関係する漁業者に対して必要な措置をとる案が示された。また、漁業活動によって故意ではない形で発電設備を毀損(きそん)した場合に、漁業者の負担を極力軽減する対応を検討する案が盛り込まれた。漁業が基幹産業である松前町ならではの漁業振興策・地域振興策によって「松前モデル」の確立を目指す。

選定事業者が拠出する基⾦については、公募占⽤計画で⽰される発電設備出⼒(kW)の規模に、kWあたりの単価(250円)と公募占⽤計画の最⼤認定期間(30年)を乗じた額、すなわち発電設備出⼒(kW)×250×30で算定される額を⽬安とする案も示された。

会議では、漁業者に配慮することを条件に、道内初の促進区域の指定に同意した。これに伴い、松前沖は今年の秋にも促進区域に指定され、年度内に事業者の公募が開始される見通しだ。

経済産業省・資源エネルギー庁の石井孝裕風力対策室長は「洋上風力発電を始めたことで漁業が衰退するのは論外。選定事業者が環境影響調査を実施するが、より公平を期すために、漁協が推薦するメンバーにも審議会に加わってもらいたいと考えています。漁業振興、地域振興を含めてしっかりと国も伴走していきます」と力強く述べた。

DATA

北海道松前沖 第3回法定協議会


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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