洋上風力発電を魅力あるキャリアに。産学連携で人材育成に取り組む
2024/12/13
洋上風力発電が立地する地域の7つの大学と発電事業者がコンソーシアムを設立し、高度な知識やスキルを有する人材の育成に取り組んでいる。国際的な業界団体の世界洋上風力フォーラムが活動を支援している。
(今年6月のオフショアウインド・スチューデントデイには全国から大学生・大学院生が集まった。提供:WFO)
幅広い業務を主導する
高度人材の育成を目指す
コンソーシアムの名称は、「産学連携洋上風力人材育成コンソーシアム(IACOW、アイエーシーオウ)」。洋上風力発電が立地する地域の7大学、発電事業者10社がメンバーとして参画し、洋上風力発電プロジェクトの開発・建設・運営などの統括業務を主導できる人材育成を目指す。風車メーカーや業界団体、海外の大学などともネットワークを築いており、人材育成のための「しくみとカリキュラム」を提供する。
来年度から7大学が共同で、主に大学院生向けの正規科目として、漁業共生・ステークホルダーマネジメント、プロジェクトマネジメントなど7つの科目を段階的に開始する。今年度は、秋田県立大学で風力発電技術の授業を試行的に実施した。
コンソーシアムの代表を務める山本郁夫 長崎大学副学長は「参画する大学間で単位互換制度を導入し、別の大学の授業を受けても単位が認定される仕組みを構築しています。コンソーシアム内外の企業に協力してもらい、複数回の実践型インターンシップを実施するなどして、高度人材の育成を目指します」と意気込む。
洋上風力分野で働くやりがい
学生に熱意を届けるセミナー
(オフショアウインド・スチューデントデイで開会挨拶を述べる山本郁夫 IACOW代表・長崎大学副学長。提供:WFO)
今年6月に東京で開催された世界洋上風力フォーラム(WFO)のアジア洋上風力サミット2024。WFOは、特別企画として「オフショアウインド・スチューデントデイ」というセミナーを開催した。WFO日本代表の渡辺さゆり氏は「若い世代にエネルギー分野への理解を深めてもらい、洋上風力分野でのキャリアの可能性を知ってほしいと考えました」とセミナーに込めた思いを語る。
(今年6月のオフショアウインド・スチューデントデイの様子。提供:WFO)
東京の会場とオンラインで全国から合計20校の大学生・大学院生が参加し、洋上風力分野で活躍する8名の登壇者のスピーチに、真剣に耳を傾けた。山本氏は「イベントの前後に学生にアンケートをとったところ、洋上風力分野で将来仕事をしたいと答えた割合が大幅に増えました。キャリアの可能性をイメージしてもらうことができたと感じています」と前を向く。
(オフショアウインド・スチューデントデイで挨拶するWFO日本代表の渡辺さゆり氏。提供:WFO)
来年2月に東京ビッグサイトで開催されるWIND EXPO春 第15回国際風力発電展では、IACOWとWFOの共催で第2回オフショアウインド・スチューデントデイを行う予定だ。「セミナーや業界とのネットワーキング、展示ブースの見学などを通じて、洋上風力分野に関心を持つ学生を増やしていきたいと考えています。IACOWのカリキュラムやインターンシップで学んだ学生が、社会で経験を積んで講師として戻ってきてくれる日を楽しみにしています」と山本氏は笑顔を見せる。
IACOWは今年12月22日、「海洋空間計画と浮体式洋上風力への期待」をテーマとする海洋教育フォーラムを長崎市内の会場とオンラインのハイブリッドで開催する。浮体式洋上風力の沖合への展開に関心のある人は参加してほしい。
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取材・文:山下幸恵(office SOTO)