注目キーワード

English 日本語

業界トピック

【EXECUTIVE INTERVIEW】ものづくりの高い技術で洋上風力発電市場への参入を目指す 愛媛県編

2040年に向けての電源構成を定める「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定された。洋上風力発電の導入拡大を進めるため、エグゼクティブ達は何を考えるのか。「愛媛県」の再エネ事業における注力ポイントについて聞いた。

<目次>
1.洋上風力市場への参入を目指してコンソーシアムを設立
2.高信頼性と充実したアフターサービスを提供
3.超軽量で水にも強い断熱素材
4.独自の環状翼構造で特許を取得したドローン
5.放射線利用技術と検査診断技術のエキスパート

 

洋上風力市場への参入を目指して
コンソーシアムを設立

WIND EXPOの展示ブース

愛媛県には、造船や舶用機器製造、大型製缶、機械加工などの高い技術力を有する企業が数多く立地している。こうした産業特性を活かして、2024年5月に県と県内企業約30社が、洋上風力発電市場への参入を目指す「愛媛県洋上風力産業振興コンソーシアム」を設立した。コンソーシアムを中心に、官民を挙げて県内企業の優れた技術を国内外へ広く発信し、ビジネスマッチングを図るのが目的だ。

今回のWIND EXPOには、BEMAC、ウシオマテックス、小笠原工業所、住重アテックスの4社がブースを構えて、技術力の高さをアピールした。

高信頼性と充実した
アフターサービスを提供

BEMACは、DPS(自動船位保持システム)を出展しました。当社は創業以来、舶用機器メーカーとして海事産業に根ざして、配電盤や監視盤、船舶内の配線・電気工事を主体に、船舶のルールや運航環境を熟知し、高度な技術による信頼性と安全性、さらに納入後のコミッショニングを含む充実したアフターサービスを強みとしています。

模型船やデジタルシミュレーションを活用した綿密な検証を経て開発されたDPSは、厳しい環境下にも耐え得る性能を備えています。完全自社製造で、あらゆるニーズに細やかに対応できるのが特長で、洋上風力発電の開発に不可欠となる各種オフショア船の需要に対応いたします。

BEMAC株式会社
イノベーション本部
東京データラボ課長代理

羽生一成氏

超軽量で
水にも強い断熱素材

ウシオマテックスは、高難燃性・高断熱性を併せ持つ発泡スチロールボード「バリシールド」を出展しました。原料は、南極昭和基地の断熱材にも採用され、40年以上断熱性能が変化しないことが証明されたEPS(ビーズ法発泡スチロール)です。難燃剤をコーティングすることで、国土交通省の不燃認定を取得しています。

仮に火災が発生しても燃え広がりにくく、火災を遅延させることができます。また、専用金型での異型成型や切削加工、スライス・研磨によるボード加工など、さまざまな製品を成型することができるのも特長です。こうした独自の機能を活かして、洋上風力発電における電源盤や制御盤などの熱源設備、機器本体向けの断熱材としての活用を想定しています。

ウシオマテックス株式会社
東京支店 支店長

藤野聡史氏

独自の環状翼構造で
特許を取得したドローン

小笠原工業所は、長時間の飛行が可能な産業用ドローンを出展しました。機体の70%にマグネシウム合金、20%にCFRP(カーボン)を組み合わせて使用することにより、軽量でありながら、高剛性と高い耐久性を兼ね備えたドローンを開発しました。従来の一般的なドローンの飛行時間は20分程度と短く、業務での使用に支障がありましたが、当社は長時間のフライトに特化した空力構造を開発し、実証実験で最大75分の飛行に成功しています(海抜40m、平均風速3m/sの条件下、2kgを積載して2m/sで運行した場合)。風を浮力に変え、飛行時間を延ばす環状翼構造は特許を取得しています。

この技術を生かし、風力発電のメンテナンスなどへの貢献を目指しています。実用化に向け、現在はタワー、ブレード、ナセルの損傷を検知する6100万画素のカメラを搭載したメンテナンス用ドローンの開発に取り組んでいます。

株式会社小笠原工業所

横田宏一氏

放射線利用技術と
検査診断技術のエキスパート

住重アテックスは、住友重機械工業が開発している「鉄鋼壁面走行ロボット」と、自社開発の「PAUT (超音波探傷技術)」を組み合わせた非破壊検査システムを出展しました。

鉄鋼壁面走行ロボットは、垂直壁の走行のみならず曲面や凹凸に対する高い走破性を特長としています。PAUTは、検査対象物の内部状況を断面画像で把握することができるため、さまざまな形状や場所の探傷にも適用可能です。製鉄・石油化学プラント内の重要設備における長年の検査診断実績に加えて、陸上風力発電設備では、ヨーギアの検査やタービンローター主軸、タワー締結ボルトの割れ検査での適用実績があります。
将来的には、無線タイプや、溶接線に沿って動く自律走行機能の開発に取り組んで、洋上風力発電市場への参入を目指しています。

住重アテックス株式会社
検査診断技術部
技術担当部長

豊島 崇氏

DATA


愛媛県産業政策課スゴ技グループ 

関連記事

北九州市響灘
広告お問い合わせ

アクセスランキング

  1. 秋田県、発電事業者に再発防止策を求める 県内の風力発電所にも適切な保守管理を要請...
  2. 秋田市の風車ブレード落下、15年前にも落下事故 経産省が現地調査を開始...
  3. 【洋上風力第4ラウンド】鹿児島県いちき串木野市沖 事業化に向けて国に情報提供...
  4. 動き出した浮体式大規模実証 水深400メートルの未知の海域に超大型風車を設置...
  5. 武藤経産相「事故原因の究明を踏まえて必要な安全対策を検討」
  6. 石川県輪島市検討協議会、浮体式洋上風力の誘致推進を決議 震災復興へ
  7. 【深堀り解説】浮体式の新たな動きが活発化、技術研究組合の設立や電気運搬船構想...
  8. 【特集】洋上風力「第4ラウンド」の動向まとめ 異例の展開のラウンド事業の行方は?...
  9. 岩手県久慈市沖浮体式計画で国に情報提供 事業推進を前提に地元漁協が法定協参加に同意...
  10. 【特別企画】洋上風力トップ3社が熱い議論、日本が直面する課題と解決策とは?...

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.08 | ¥0
2025/2/19発行

お詫びと訂正