知っておきたい世界や日本における、風力発電の最新・重要データ
2022/02/10
日本政府が脱炭素化の「切り札」と位置付けているのが洋上風力発電。経済産業省と国土交通省は2021年9月、再エネ海域利用法に基づく「促進区域」「有望区域」「準備段階区域」を更新した。世界や日本での陸上・洋上風力発電の導入状況を紹介する。
世界の風力発電累計導入743GW、
日本は4.4GW 2020 年末
世界風力会議(GWEC)によると、2020年末の世界の風力発電の累計導入量は743GW(前年比14%増)で、標準的な原子力発電設備(1GW)の743基分だ。日本の累積導入量は4.37GWで世界20位(0.6%)。
一方、20年単年の世界の新規導入量は93GWで、内訳は陸上が86.9GW、洋上は6.07GWだ。
世界の洋上風力累積導入35GW、
日本わずか59MW
国際的な自然エネルギー政策ネットワーク組織REN21によると、20年末の世界の洋上風力発電の導入量は35GWで、10年前の2.9GWから12倍以上に増えている。
20年末時点で洋上風力を導入しているのは18ヶ国で、内訳は欧州(12)、アジア(5)、北米(1)と欧州が全体の約7割を占める。国別の導入量は首位が英国(10.4GW)、中国(10GW)、ドイツ(7.7GW)、オランダ(2.6GW)、ベルギー(2.3GW)、デンマーク(1.7GW)と続く。
出典:REN21“ Renewables 2021 Global Status Report” Figure 36(2021年6月)
日本国内に風車2554基、
洋上は28基
日本風力発電協会(JWPA)によると、日本に導入された洋上風車は累計28基(58.6MW)。内訳はセミ洋上・着床式が23基、着床式が1基、浮体式が4基だ。商用が25基、実証研究は3基だ。28基のうち、福島県楢葉沖の2基は2021年夏に撤去されている(2020年末時点)。
出典:日本風力発電協会(JWPA)
JWPAによると、20年末の日本国内の陸上、洋上を合わせた風車の累計導入数は2554基(4.4GW)。このうち洋上は28基(58.6MW=0.0586GW)。20年単年の陸上、洋上を合わせた風車は166基(516MW)で、前の年の1.9倍で過去最大を更新した。
洋上風力「促進区域」に
秋田県八峰町・能代市沖、全国5番目
「有望」は7、「準備段階」が10に
再エネ海域利用法の対象区域
21年9月13日、「再生可能エネルギー海域利用法(再エネ海域利用法)」に基づく洋上風力電事業の「促進区域」に、秋田県八峰町・能代市沖が指定された。指定は全国で5番目。また、「一定の準備段階に進んでいる区域」である秋田県男鹿市、潟上市・秋田市沖、山形県遊佐町沖、新潟県村上市・胎内市沖の3区域と、いずれの区域にも分類されていなかった千葉県いすみ市沖は「有望な区域」に指定された。
さらに、新たに北海道、岩手、福井、福岡、佐賀の1道4県の7区域が「一定の準備段階に進んでいる区域」として整理された。これにより、再エネ海域利用法の対象区域は22区になった。
促進区域は、漁業や海運業などの先行利用に支障を及ぼさないなどの要件に適合した一般海域内のエリア。公募で選定される事業者は、区域内で最長30年間の占用許可を得る。
「洋上風力産業ビジョン」と2021年9月13日発表の「再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定と、有望な区域等の整理」をもとにWIND JOURNAL編集部が作成
長崎県五島市沖の事業者戸田建設など6社に決定
「促進区域」で初
21年6月11日、「促進区域」である長崎県五島市沖の洋上風力発電の事業者として、戸田建設、ENEOS、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力の6社でつくるコンソーシアムが選定された。「浮体式」洋上風車(2.1MW)を8基建設予定で、発電容量は16.8MW。「促進区域」での事業者選定は初めて。
文:山村敬一
WIND JOURNAL vol.1(2021年秋号)より転載