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千葉・銚子沖の洋上風力、漁業者らとの共生に向け100億円規模の基金を活用へ

千葉県銚子市沖では、地域の漁業者など関係者との共生に向け、基金への支出や新会社の設立といった動きが活発化している。公募占用指針にも盛り込まれた基金では、漁場の実態調査などを行うとみられる。

漁業者など関係者との共存共生へ
基金の活用で漁場の調査など要望

千葉県銚子市沖は2020年7月、再エネ海域利用法に基づく促進区域に指定された。昨年末に行われた事業者選定(ラウンド1)では、三菱商事グループなどによるコンソーシアムが落札。31基のGE製風力タービンを設置し、合計出力39.06万kWの着床式洋上風力発電を2028年9月に運転開始する予定だ。

一方で、銚子市には、全国有数の水揚げ量を誇る銚子漁港などが軒を連ねる。水産業は、同市の基幹産業だ。洋上風力発電の開発にあたっては、こうした地域の漁業者など関係者との合意形成が欠かせない。

そのため、公募占用指針には、地元自治体が設立した基金に対し、選定事業者が出捐することや、漁場の実態調査などを行い、地域や漁業との共存に努めることなどが盛り込まれた。出捐する金額は、20年間の売電収益の約0.5%をが目安とされるが、具体的には協議会で議論のうえ決めることになる。

銚子市では、促進区域に指定される以前の2019年11月に「千葉県銚子市沖における協議会」を設置し、地元の銚子市漁業協同組合や海匝漁業協同組合、千葉県漁業協同組合連合会といった関係者らとの協議を行ってきた。

こうした経緯から、同協議会が公募前に行った説明会では、前述の基金の使途について以下のような要望が整理された。


(「千葉県銚子市沖における協議会意見とりまとめ」に係る基金への出捐等について。出典:千葉県)

これによると、漁場の実態調査として銚子市に設置する基金に3億円、漁業との協調・共生・振興の取り組みの原資として、銚子市と隣接する旭市に設置する基金に総額100億円、同様に、千葉県漁業振興基金に総額15億円の合計118億円を基金として希望するとされた。

同説明会では、協議会の構成員である銚子市漁業協同組合から「銚子が開発と漁業の共存共栄のモデル的な地域になれれば、との思いでこの事業を一緒にやっていきたいと考えている。漁業振興を図るための基金への出捐金は漁業に対する補償ではないと思っている」といった期待が寄せられた。

新会社設立で地域活性化も狙う
地域経済の循環や雇用創出に期待

銚子市漁業協同組合などは2020年9月、洋上風力発電設備の運転管理やメンテナンスなどを行う企業「銚子協同事業オフショアウインドサービス(C-COWS(シーコース))」を設立した。同社への出資比率は、銚子市漁業協同組合が60%、銚子商工会議所が30%、銚子市が10%だ。

さらに、同社は、洋上風力発電設備への視察をきっかけに、地域の観光産業を活性化することを目指す「銚子市沖洋上風力視察受け入れ協議会」も立ち上げた。

洋上風力発電を中心とする新たな取り組みが広がり、地域経済に循環を生み出すことが大いに期待される。

DATA

千葉県「千葉県銚子市沖における協議会」構成員による公募前説明会の開催結果について


文:山下幸恵(office SOTO)

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