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丸紅 秋田県沖洋上風力、国内初の商業運転開始

秋田県の秋田港湾区域と能代港湾区域で進められていた洋上風力発電事業が本格的に動き出した。丸紅など13社で構成する特別目的会社「秋田洋上風力発電」が約1000億円を投じて進めてきたプロジェクト。同社は12月22日、能代港湾区域に設置した20基の風車を本格稼働させ、国内初となる大規模な洋上風力発電の商業運転がスタートした。

英国のSEP船が
大型風車を設置

英国シージャックス社のSEP船「ザラタン号」

特別目的会社「秋田洋上風力発電(AOW)」は、丸紅、大林組、東北電力、コスモエコパワー、関西電力、中部電力、秋田銀行(秋田市)、大森建設(能代市)、沢木組(男鹿市)、 協和石油(秋田市)、加藤建設(男鹿市)、寒風(男鹿市)、三共(にかほ市)の13社が出資して、16年4月に設立された。秋田市の秋田港湾区域に洋上風車13基、能代市の能代港湾区域に洋上風車20基を設置する事業を進めていた。
陸上工事は20年3月から21年9月まで。洋上工事は21年3月からスタートした。22年6月には、自己昇降式作業台船(SEP船)が秋田港に入港し、洋上での設置工事が本格化していた。洋上風車の設置を手がけたのは、英国大手シージャックス社の「ザラタン号」。全長約110メートル、幅約40メートルで、最大800トンまで対応可能なクレーンを搭載している。4本の柱を下ろして海底に固定し船体を持ち上げることで、波が高いときでも安定して作業を行うことができる。

秋田港湾区域に設置された洋上風車 2022年9月

洋上に設置された風車は、デンマークの大手風車メーカー、べスタス製。商業運転の開始後は、最長20年にわたって同社日本法人のべスタス・ジャパンが洋上風車の保守点検を担当する。べスタス製の洋上風車は、海面からの高さが約150メートル。ブレード(羽根)は1枚の長さが57メートル。保守点検に使用する工具や部品も大型のものが多い。風車は1万点を超える部品でつくられ、保守点検には高い技術と専門知識が求められる。洋上で安全に作業を進めるための国際標準の訓練も必要だ。

秋田市と能代市で働くべスタス・ジャパンのスタッフは約20人。そのうちの半数は秋田県内で採用した。新規採用された技術者は21年11月から洋上風力発電の先進地の欧州へ派遣され、イギリスやオランダ、ベルギーで現場経験を積んだ。べスタスは本社から遠く離れた日本で、保守点検を外部の会社に委託せずに、自社の日本法人を立ち上げた。アジア太平洋地域で市場開拓を進めるうえで、秋田を重要な拠点と位置付けているのだ。

能代港湾区域では8月下旬に20基の風車の設置が完了し、秋田港湾区域でも9月下旬に13基の風車の取り付け作業が終了した。これまでに風車の試運転と法定検査を終え、能代港湾区域では12月22日から20基の風車の商業運転をスタートし、秋田港湾区域の13基の風車は来年1月中に運転を始める予定。洋上風車の最大出力は合計約14万キロワットで、一般家庭約13万世帯分に相当する。四方を海に囲まれた日本が、洋上風力発電の導入拡大に向けての第一歩を踏み出した。


取材・文/高橋健一

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