石狩湾新港沖、道内初の商業運転スタート ジャケット式基礎は国内初
2024/01/01
北海道の石狩湾新港沖で1月1日、道内初となる洋上風車の商業運転がスタートした。最大出力は11万2000kW。基礎工事では国内初のジャケット式を採用している。
(アイキャッチ画像 写真提供:株式会社グリーンパワーインベストメント)
元日午前0時に
商業運転スタート
プロジェクトの概要(出典 グリーンパワーインベストメント)
石狩湾新港沖の洋上風力発電プロジェクトは、「グリーンパワーインベストメント」が設立した特別目的会社「合同会社グリーンパワー石狩」が進めていた。小樽市と石狩市にまたがる石狩湾新港の沖合に、出力8000kWの風車を14基設置している。最大出力は11万2000kW。一般家庭約8万3000世帯分の電力を賄うことができる。FITにより36円/kWhで、北海道電力ネットワークに20年間売電する予定。2023年1月に本格操業を開始した秋田県の秋田・能代港湾区域と比べると、全体の出力は小さいが、単機出力は石狩湾新港沖が2倍近い。商業運転は、1月1日午前0時にスタートした。
国内で初めて
ジャケット式の基礎を採用
ジャケット式基礎の設置工事(写真提供 株式会社グリーンパワーインベストメント)
2020年8月から陸上で送電施設の工事が始まり、2022年5月に海上で杭を打設する工事が開始された。石狩湾新港沖の海上工事では、国内で初めて「ジャケット式」の基礎が施工された。ジャケット式は4本脚の格子状で、大水深、もしくは大口径杭の打設が難しい岩盤地質で使用される。地盤からの影響や波浪などの外力を受けにくく、また鋼管杭で支持する構造形式のため、軟弱な地盤条件でも優位性を発揮する。
2023年7月からは、清水建設が建造した国内最大のSEP船「BLUEWIND」が港の沖合約1.6kmの地点で洋上風車の設置工事を開始した。高さ90mのタワーと、長さが84mのブレード、それに発電機が入ったナセルなどを船に積み込んで洋上の現場へ運び、1基あたり約3日間で組み上げた。SEP船による洋上風車14基の設置作業は2023年9月初めに完了し、11月中旬からは風車全基が稼働している状態での陸上蓄電池施設の試験を含む総合試運転を実施していた。
余剰電力を蓄電池に
42台のコンテナ設置
大規模な蓄電池システム(写真提供 株式会社グリーンパワーインベストメント)
札幌市に隣接する石狩市の石狩湾新港地域には大規模な工業団地があり、約3000haもの広大な敷地に700を超える企業が進出し、2万人以上が働いている。この洋上風力発電プロジェクトでは、発電した電力を北海道電力に売電するが、余剰電力を蓄電池にためる予定。近くの陸地には、リチウムイオン電池の入ったコンテナが42台設置されている。
NTT子会社と
JERAが共同で買収
NTT子会社でエネルギー事業を手がけるNTTアノードエナジーと、東京電力グループと中部電力が折半出資するエネルギー会社JERA(ジェラ)は2023年5月、グリーンパワーインベストメントを共同で買収すると発表した。投資額は3000億円規模。出資比率はNTTアノードエナジーが約8割、残りがJERAとなる。両社は必要な手続きを経て、2023年内に株式の取得を完了している。
JERAとグリーンパワーインベストメントは、「再生可能エネルギー事業の普及を通じて、地域の未来をともに考えていくことを理念に据えております。今後は本事業を安定的に運営し、さらに本事業を通じた地域振興を石狩市、小樽市、および地域の皆さまとともに取り組んでいく予定です」としている。
DATA
取材・文/高橋健一