太平洋マテリアル、洋上風車向けグラウト材で国内メーカー初の国際型式認証取得
2024/09/30
建設資材メーカーの太平洋マテリアルが、洋上風力発電の風車基礎に使う高強度グラウト材「太平洋プレユーロックスOFW」を開発した。国内メーカーとして初めて、DNVの国際型式認証を取得し、洋上風力発電業界へ本格参入する。
洋上施工に不可欠な
水中不分離性が特長
新開発した高強度グラウト材「太平洋プレユーロックスOFW」は、着床式洋上風力発電施設でモノパイル基礎と風車タワーの接合部に当たるトランジションピースの空隙に充填し、両者を強く結合するために使われる。トランジションピースはタワーとモノパイルを接続するための鋼構造物のことで、2つの異なる鋼管を同心に内側と外側に重ね合わせ、グラウト接合する。「太平洋プレユーロックスOFW」は、モノパイルのほか、ジャケット式基礎にも活用できる。
「太平洋プレユーロックスOFW」の最大の特長は水中不分離性だ。タワーとモノパイルを結合する際は、水中でグラウト材を充填する。同社が保有するプレミックス材の混和材技術を活かし、水中下でも優れた施工性と高い強度発現性を有するグラウト材を開発した。
洋上風車の建設時にSEP船に専用プラントを積載し、グラウト材の充填箇所にポンプ圧送して注入する。太平洋マテリアルでは、この専用プラントも国内の機械メーカーと共同で新たに開発した。洋上風車の大型化に伴うSEP船の巨大化にも対応している。
太平洋プレユーロックスOFWの水中不分離性
国内メーカーで
初のDNV国際型式認証を取得
全国各地で洋上風力発電の導入が進められているが、建設に必要な機材や資材の多くは欧州をはじめとする海外からの輸入に頼っている。タワーとモノパイルを結合するグラウト材もその1つだった。
「太平洋プレユーロックスOFW」は、国産のグラウト材として初めて、世界的な認証機関であるノルウェーDNVの国際型式認証を取得した。製造体制や品質・施工管理などが世界的な水準を満たしていると認められ、これまで輸入に頼っていたグラウト材を、国内で調達できるようになった。
太平洋マテリアルでは、国内製造のメリットは多岐にわたるとアピールする。原料の国内調達を可能にするとともに、為替変動に左右されずに顧客にタイムリーに供給できるようになるとしている。洋上風力発電事業は、計画の策定から運転開始まで長い歳月を要するなか、発電事業者や施工業者はその間の為替変動を考慮しなければならない。国内調達であれば、為替変動を気にせずに資材を安定的に確保できるというのだ。
太平洋マテリアル機能性材料営業部の保井渉氏は「施工業者からは、以前から国内で資材調達したいという要望があり、再エネの拡充を見越して、4年前にこの分野に参入することにした」と説明する。
太平洋プレユーロックスOFWの流動性
高温下の施工環境に合わせて
製品開発を進める
さらに、高温下という日本特有の施工環境に合わせて、製品開発したこともポイントの1つだ。欧州では気温の低い時期に建設されるケースが多いのに対し、日本は日本海側の建設予定地が多く、気象・海象の穏やかな春から秋にかけて洋上風車の設置が計画される。太平洋マテリアルは、グラウト材を気温の高い夏季でも流動性が保持できる仕様にしたとしている。
同社は太平洋セメントグループの一員として、建築・土木分野における建設用資材などを自社開発するトータルサプライヤー企業だ。アイテム数は数百種にもおよび、グラウト材もその1つである。幅広い分野の建築・土木構造物に使用されており、多数の特許を保有している。
洋上風車向けの製品開発に先駆けて、2023年3月に陸上風車向けのグラウト材「太平洋プレユーロックスXS」を発売している。中性化、塩分浸透、凍結融解などに高い抵抗性を発揮する特殊グラウト材で、すでに施工実績があり、年内に数件の施工予定があるという。洋上風車向けに開発された新製品には、これらの高い技術力が活かされている。
太平洋プレユーロックスOFW専用ミキシングプラント
問い合わせ
太平洋マテリアル株式会社
東京都北区田端六丁目1番1号 田端ASUKAタワー15階
電話 03-5832-5217
取材・文:横山渉
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