秋田市のブレード落下事故、補強板の破損や焦げ跡を確認 破壊との関連を調査
2025/06/19

秋田市で風力発電設備のブレードが落下した事故で、風車メーカーが2020年7月に「中間レセプタ」と呼ばれる避雷針の役割を果たす部品を取り外していたことや、ブレード内で補強板の破損や焦げ跡が確認されたことがわかった。
メイン画像:ブレードが破損した秋田市の風力発電設備
風車の破片が
最大250メートルに飛散
破損した風車と破片の飛散状況(出典 経済産業省)
第23回産業構造審議会の保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会電気設備自然災害等対策ワーキンググループが6月18日に開催され、5月2日に秋田市で風力発電設備のブレードが落下した事故について議論した。風車を設置した発電事業者「さくら風力」の盛高健太郎社長や、保守点検を担当する日立パワーソリューションズの関係者も出席した。
このなかでは事故の概要について、さくら風力の親会社新エネルギー技術研究所の上原康明技術部長が説明した。破損したブレードの部品は少なくとも30ヶ所以上に飛散し、最も遠いところでは風車の北西約250メートルの地点に落下していた。約250メートル地点に落下していたのはブレードの表層部材で、長さは約60センチ、重さは約250グラムだった。
事故発生の直前に
風速が急激に強まる
2025年5月2日午前9時の天気図(出典 経済産業省)
事故当日の気象については、高気圧が日本の東を北東へ移動し、一方で低気圧が日本海を北東へ進んでいた。事故当時の秋田市の天候は曇りまたは晴れで降雨なし。気象庁から発表されていた注意報・警報は、強風注意報のみ(午前4時15分発表、15時42分解除)だった。落雷については、事故当日は観測されていない。事故発生時刻は午前10時7分から8分にかけての時間帯と推定している。風車の風速データは、10時4分の秒速15.5メートルから1分後の10時5分には26.2メートルと急激に強くなっている。
2018年12月に落雷検出装置を設置して以降、22年1月の高電荷(984C)落雷を含め、25年3月までのあいだに多数の落雷を観測している。過去1年間の定期点検については、昨年5月に望遠カメラにてブレードの外観を目視点検、ブレード内部を人が入って目視確認し、ブレードに異常がないことを確認している。昨年9月には望遠カメラにてブレードの外観を目視点検、ブレード内部を人が入って目視確認、内部にあるダウンコンダクターはファイバースコープカメラで確認し、ブレードに異常がないことを確認している。昨年11月には望遠カメラにてブレードの外観を目視点検、ブレード内部を人が入って目視で確認し、ブレードに異常がないことを確認している。(ブレードに対する事故前最後の点検)。そのほか、昨年5月から今年4月にかけてブレードの外観点検を月に1回実施しているが、異常は検出されていないとしている。
2020年7月に
中間レセプタを撤去
破損したブレードの取りはずし作業 5月23日(出典 株式会社新エネルギー技術研究所)
発電事業者からの報告のなかでは、5年前の20年7月に、風車メーカーのエネルコンが「中間レセプタ」と呼ばれる避雷針の役割を果たす部品を取り外していたことを明らかにした。中間レセプタがあったダウンコンダクター部付近で焦げ跡が見つかっているが、焦げ跡がいつついたものであるかは不明だとしている。そのほか、ブレードのなかで炭素繊維強化プラスチック製の補強板に破損が発見された。
さくら風力は5月12日、風力発電や環境条件に詳しい大学の研究者3人を第三者委員としてメンバーに加えて「新屋浜風力発電所ブレード破損事故調査委員会」を設置している。オブザーバーとして、経済産業省関東東北産業保安監督部東北支部も参加する。さくら風力の親会社「新エネルギー技術研究所」が事故調査委員会の事務局をつとめる。さくら風力は、中間レセプタがあったダウンコンダクター部付近の焦げ跡や、補強板の破損とブレード全体の破壊との関連について、引き続き調べることにしている。
DATA
第23回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気設備自然災害等対策ワーキンググループ
取材・文/高橋健一