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風力発電設備の落雷対策を厳格化、技術基準と定期自主検査の一部改正を施行

経済産業省は8月6日、「発電用風力設備の技術基準の解釈」と「定期自主検査の方法の解釈」の一部改正を施行した。日本海側の冬季雷区域においては、風車停止中の被雷把握や点検周期などを厳格化している。

メイン画像:風力発電設備のメンテナンス作業
(画像:©ultramansk/Shutterstock.com)

<目次>
1.相次ぐブレード破損事故で 浮きぼりになった課題
2.冬季雷区域では 風車への雷撃の有無を「常に把握」
3.冬季雷区域では ブレード点検周期を1年に
4.経済産業省の今後の動きと 取り組むべき課題

相次ぐブレード破損事故で
浮きぼりになった課題

 


秋田市の新屋浜風力発電所でブレード落下事故(2025年月)

 
経済産業省が2021年度から2025年度までに報告された自家用などの風力発電設備を調査した結果によると、ブレード破損事故の原因内訳では風雨や地震、雷などの自然災害が最も多く、なかでも雷に起因する事故が全体の約半数を占めている。被雷による構造破壊や内部空気の急速な熱膨張に伴う剥離、破断が主要な原因として挙げられている。

特に秋田県沿岸部においては、昨年5月に秋田市の新屋浜風力発電所でブレードが落下する事故が発生したことに続き、今年4月には男鹿市の「風の王国・男鹿風力発電所」において、長さ約40メートルのブレードが根元近くから折れる事故が発生した。2つの現場はともに河口近くの海沿いに位置し、事故機はいずれも独エネルコン社製「E-82」で、日立パワーソリューションズが保守管理を請け負っていた。

今年4月に発生した男鹿市の事故では、停止中の落雷検出や保守管理における課題が明らかになった。事故当日の気象データでは大きな落雷は観測されず、落雷検出装置にも記録は残されていなかった。しかしその後の調査により、昨年8月5日から今年1月14日までの期間、所内停電の影響で風力発電機が系統解列され、落雷検出装置が不稼働状態にあったことが判明した。この間における雷撃の有無や設備への影響が把握できておらず、復電後の運用において潜在的な損傷が事故につながった可能性が推測されている。

5月28日の国の審議会で公表された中間報告では、破断ブレードに貫通放電痕や炭化が確認された。他地域でもレセプター以外の箇所への着雷による破損や内部避雷導線の放電破壊、地震動との複合作用による折損事故などが報告されており、停止中を含めた確実な雷撃検出体制の確立と点検指針の再構築が課題となっている。
 

 

冬季雷区域では
風車への雷撃の有無を「常に把握」

 


秋田県男鹿市の風の王国・男鹿風力発電所でブレード破損事故(2026年4月)

 
経済産業省は今年5月15日に一部改正案を公表して意見公募を実施し、同年8月6日に「発電用風力設備の技術基準の解釈」と「電気事業法施行規則第94条の3第1号及び第2号に定める定期自主検査の方法の解釈」の一部改正を施行した。今回の見直しは、雷撃からの風車保護措置の明確化と定期自主検査における検査方法・周期の適正化を目的としている。

「発電用風力設備の技術基準の解釈」第7条第6項の改正では、別図1のA線地域(冬季雷区域)などにおいて、ブレードに炭素繊維強化プラスチックなどの導電性材料を使用する場合、引き下げ導体などと適切に電気的接続を行うことを義務付けた。また、従来の運転中の停止措置に加え、風車への雷撃の有無を停止中も含めて「常に把握」できるよう落雷検出装置や監視カメラの施設、気象情報の利用といった措置を新設し、把握できなかった場合には内視鏡を用いたブレード内部点検などにより損傷を確認することを義務付けた。

5月15日の改正案では、後段の運転中の即時停止に関する記述から「落雷検出装置などを施設すること」という文言が一時的に落とされていたが、8月6日施行の改正規定では改正前の規定文言が改めて明記され、「なお、風車の運転中においては、風車への雷撃があった場合に直ちに風車を停止できるように、落雷検出装置などを施設すること」と整えられた。これは後退ではなく、運転中の即時停止にあたって落雷検出装置などの設置という明確な手段(施設義務)を改めて担保したうえで、常時監視や内部点検義務を上乗せ・厳格化したものといえる。

 

冬季雷区域では
ブレード点検周期を1年に

 


秋田県男鹿市の風の王国・男鹿風力発電所でブレード破損事故(2026年4月)

 
「定期自主検査の方法の解釈」別表2の改正では、ブレードの内部点検方法として視認およびアクセス不可能な範囲に対する「内視鏡による点検、非破壊検査その他これらに類する方法」が明記された。また点検周期に関して、技術基準の解釈の別図1に示すA線地域に設置する設備は点検周期を「1年」とし、別図2に示すB線地域に設置する設備は点検周期を「2年」とすることが定められた。

今回の改正に伴い、落雷条件が厳しい「冬季雷区域」に風力発電設備を設置・計画している事業者には維持管理面での厳格な対応が求められる。別図1のA線地域においては、ダウンコンダクターの機能確認やブレード内部全体に対する内視鏡などの点検周期が「1年」と定められたため、定期自主検査における作業頻度が増加する。

さらに、運転中のみならず停止中も含めて雷撃の有無を「常に把握」することが求められるため、停電時であっても作動するバックアップ電源などを備えた落雷検出装置の設置や常時モニタリング体制の構築が必要となる。停電や装置故障などにより雷撃の有無が把握できなかった期間が生じた場合には、稼働前にブレード内部の内視鏡点検などを実施しなければならず、これに伴う点検費用や風車停止による売電機会の変動が事業運用に影響を与える。洋上風力発電設備においても、最寄りの行政区域の区分に従ってこれらの規定が適用される。

落雷条件が厳しい地域における基準の具体化・厳格化に対し、当該地域で事業を計画している関係者からは、安全確保の観点から「やむを得ない」という声がある一方、検査周期の短縮や常時監視体制の維持に伴う負担から戸惑いの声も聞かれている。
 

経済産業省の今後の動きと
取り組むべき課題

 
改正規程が8月6日に施行されたことを受け、経産省は風力発電所の安全確保に向けた取り組みを継続する。今年5月に国内のすべての風車設置者に対して要請した落雷痕の確認や内部点検の実施状況を注視するとともに、新しい基準に基づく定期自主検査の履行状況を監視する方針だ。経産省電力安全課は、「今年4月に発生した秋田県男鹿市の事故については、原因が公表された段階でその内容を精査し、必要に応じた対策を講じていきたい」と説明している。

今後の課題は、保安基準の順守と風力発電事業の促進との両立である。冬季雷をはじめとする過酷な自然環境に対応するためには、点検作業の効率化を図る技術の活用が重要となる。ドローンや内視鏡を活用した画像診断、非破壊検査手法の適用、データ分析技術の向上により、検査精度を確保するための環境整備が求められる。

また、洋上風力発電の導入が進むなかで、海域における落雷検知の精度向上や耐雷設計の適用も検討課題となる。風力発電が地域社会の理解を得て稼働するためには、法令に基づく安全基準の確実な履行と現場における保安管理体制の構築が不可欠である。自治体の再エネ担当者と風力発電事業者は、今回の技術基準解釈および定期自主検査方法改正の趣旨と具体的な見直し内容を理解し、適切な維持管理計画へ反映させることが求められる。
 

 

DATA

発電用風力設備の技術基準の解釈及び電気事業法施行規則第94条の3第1号及び第2号に定める定期自主検査の方法の解釈の一部改正について

発電用風力設備の技術基準の解釈の別図


取材・文/ウインドジャーナル編集部
 

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