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北拓 風力メンテ国内トップ企業の経営戦略【動き出す第1ラウンド事業②】

三菱商事を中心とするコンソーシアムが秋田、千葉の計3海域で進めている洋上風力発電事業で、稼働後の風車の運転保守業務を国内最大手の北拓が請け負う。北拓は、北海道旭川市に本社がある風車専門のメンテナンス企業。国内3カ所に自社の研修用風車を保有し、風力発電設備の定期点検や故障修理などのサービス事業を全国展開している。

クリーニング店の新規事業として
異業種に参入


風車のメンテナンス作業(出典 北拓)

「海外から風力発電施設を納入する仕事をしていましたが、故障や不具合が相次いだので、これからは風車のメンテナンスにビジネスチャンスがあると感じました」。北拓は1970年に、株式会社北拓クリーニングとして創業し、北海道旭川市で和服や洋服、毛皮などのクリーニングを手がける店舗の運営を行っていた。風力発電施設の計画が各地で具体化し始めたことに着目して1999年、社内に風力発電メンテナンス部門を新設する。その後、陸上風力発電施設の受注を増やし2006年、メンテナンス部門を分社化して株式会社北拓を設立した。

風力発電業界の構造は、全国的な風車の増加に対してメンテナンス体制の構築が常に後追いする形となり、需要に供給が追いつかない状況が続いている。メンテナンスを担う技術スタッフの養成と確保が容易でないため、人材不足が常態化しているのが現状だ。

風力発電設備のメンテナンス事業者は、大きく分けて下記の3種類に分類される。
① 風車メーカーや代理店のメンテナンス部門、または系列会社
② 風力発電事業者のメンテナンス部門、または系列メンテナンス会社
③ 特定のメーカーや事業者に属さない独立系メンテナンス事業者


ブレードのメンテナンス作業(出典 北拓)

北拓は、独立系メンテナンス事業者に分類される。特定のメーカーや事業者に属さずに、自前でメンテナンス技術と技術スタッフを保有しているのが強みだ。メンテナンス業務の受託に際しては、地域ごとに、もしくは特定業務分野ごと(電気、機械、ブレード、クレーンなど)に専門の企業と業務提携し、自社だけではできない領域をカバーしている。

北九州市の
「洋上風力総合拠点化」の一翼を担う


エネルギー関連産業の集積を目指す福岡県北九州市

北拓は、技術スタッフを独自に養成してメンテナンス事業を全国展開する一方、風力発電施設の開発にも参画している。2016年には福岡県北九州市に支店を開設し、洋上風力発電所の設置・運営を担う企業連合に参画した。北九州市沖では、九州電力の子会社や北拓など5社でつくる企業連合「ひびきウインドエナジー」が総額1750億円程度を投じて洋上風車25基を設置し、最大22万キロワットを発電するプロジェクトを進めている。

北九州市は「鉄のまち」の製造業の蓄積を生かし、同市を洋上風力発電の部品製造から組み立て、設置、補修にいたるまで一連の作業を担う国内初の「総合拠点化」することを目指す。市が理想に描くのは、洋上風力が盛んな欧州の基地港として知られるドイツ北部の港湾都市、ブレーマーハーフェン。かつては造船業で栄えたが、風力発電の部品工場を誘致し活気を取り戻す。北拓は、北九州市に保守人材を育成するトレーニングセンターや倉庫を建て、市が目指す「総合拠点化」の一翼を担う。

国内3カ所に
研修用の風力発電所


鹿児島県南さつま市の番屋風力発電所(出典 北拓)

洋上風力で先行する欧州で着床式のコスト構造をみると、風車製造が全体の23.8%、設置が15.5%であるのに対し、運転保守は36.2%とその割合が最も高い。特に日本においては、台風やうねりといった特有の気象条件に対応した運転保守の高度な技術の開発が求められている。北拓の吉田悟副社長は、以下の点について風力発電業界に変化が起こりつつあり、メンテナンス業界の構造が将来変わっていくとみている。

① 風車の1基あたりのサイズが大きくなり、風車基数が事実上減っていく。
② 新型の風車が増加することで、既存の技術者を含め新しいプラットホームの技術の習得が必要になる。
③ 風車性能の向上により故障やトラブルが減少し、技術者の必要数が減っていく可能性がある。
④ 国内風車メーカーの完全撤退により寡占化が進み、海外メーカーに頼らざるを得ない状況では、風車メーカーの立場が強くなり技術移管がなされなくなる可能性がある。
⑤ プロジェクトファイナンスを組成するレンダーの要求で、メーカーによる稼働率保証を伴う長期保守契約が増加する傾向にある。
⑥ 洋上風車に移行していく過程で、陸上風車以上の技術者のスキルを求められる。‬

上記のような課題に対応するため、北拓は旭川市の本社と北九州支店、福島支店(いわき市)の国内3カ所に自前のトレーニングセンターを開設している。いわき市では市や東京大学などと共同で、独自の技術認証制度の構築に取り組む。いわき市は、国や福島県などと連携して国内唯一の標準認証制度としたい考え。さらに北拓は、静岡県南伊豆町と北九州市、鹿児島県南さつま市の3カ所に自社の陸上風力発電所を保有し、技術者の養成のほか、国内外の部品サプライヤーや研究機関の技術開発、実証試験の場としても活用している。

GE製の超大型風車
134基を運転保守


GE製の超大型風車が設置される「秋田県由利本荘市沖」

三菱商事を中心とするコンソーシアムが事業を進める秋田,、千葉の計3海域では、米国の風力発電メーカー、ゼネラルエレクトリック(GE)の超大型風車「Haliade-X」が採用される。「Haliade-X」は発電出力が1万2600キロワット。高さが最大で248メートル、ローター径は220メートルに達する。秋田、千葉の3海域に計134基を設置する計画だ。

北拓は、製造メーカーのGEのもとで稼働後の風車の運転保守業務を請け負う。同社が洋上風力発電の商用プロジェクトに関わるのは、今回が初めて。GE製の超大型風車の運転保守を担うのも初めての取り組みだ。これまで同社は、各地の「着床式」や「浮体式」の洋上風力発電の実証機で、運転保守の経験と実績を積み重ねてきた。「秋田、千葉の計3海域で運転保守のどの部分を担うのかはまだ正式に決まっていないが、一般海域で最初に進められる大規模プロジェクトなので、今後の日本の洋上風力発電事業に道筋をつけることができるよう責任を持って仕事に取り組みたい」と北拓総務部の伊藤嘉隆課長は表情を引き締める。

風車メンテナンスの国内最大手に成長した北拓は、アジア市場への進出を目指す。近年は日本の商社や再エネ事業会社などが、東南アジア諸国で大規模風力発電プロジェクトに次々に参画している。今後の課題は、稼働率保証を伴う長期保守契約への対応だ。「銀行や保険会社からのニーズに対応して、長期保守契約の期間や保証内容が変動している。今後は海外進出を視野に入れて、あらゆるニーズに対応できるように技術力を高めていきたい」と同社の伊藤課長は語気を強める。北海道発の風車専門のメンテナンス企業は、地道に培った技術力を強みに日本から世界へ大きく羽ばたこうとしている。

DATA

北拓 ホームページ https://www.hokutaku-co.jp


文/高橋健一

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