愛知県、浮体式大規模実証を見据え 漁業影響調査業務を公募
2026/06/25
愛知県は、田原市・豊橋市沖で進められている浮体式大規模実証を見据え、「洋上風力発電導入検討調査業務」の委託事業者を公募する。県内初となる洋上風力発電設備の設置に際し、発電設備の導入が地元の漁業者に与える影響を精緻に把握し、丁寧な合意形成を進めることが目的だ。
メイン画像:愛知県豊橋市沖
田原市・豊橋市沖で
漁業影響の基礎調査を実施
政府が2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言して以降、国内では再生可能エネルギーの導入が急速に推進されている。愛知県においても、グリーンイノベーション基金を活用した浮体式洋上風力発電の実用化に向けた取り組みが本格化している。2024年6月には、シーテックを幹事会社とするコンソーシアムが共同提案した田原市・豊橋市沖での浮体式洋上風力実証事業が採択され、現在は実証運転に向けた準備が着々と進められている状況である。
洋上風力発電を円滑に導入するにあたっては、設置海域の先行利用者である漁業関係者の理解と協力が不可欠となる。発電設備の導入に際しては、漁業への影響を十分に考慮しながら、丁寧な合意形成プロセスを経ていくことが強く求められている。これまで愛知県沖においては洋上風力発電設備の設置事例が一切なく、設備設置に伴う操業環境の変化が、渥美外海で操業する漁業者の活動や経営にどのような影響を及ぼすかについては、現時点で明確なデータが存在していない。そのため、今回の浮体式実証事業を具体的な事例として捉え、発電設備の導入が漁業者に与える影響を把握するための基礎調査を行うこととなった。

操業実態や操業形態
漁業経営状況を把握
今回の公募における業務名は「洋上風力発電導入検討調査業務」で、委託金額の上限は消費税および地方消費税込みで1056万円。契約期間は契約締結日から2027年2月26日までとなっている。
業務の具体的な柱としては、大きく分けて「操業実態の把握」「操業形態の把握」「漁業経営状況の把握」の3点、およびこれらに付随する情報整理や技術的助言などのサポートが挙げられる。操業実態の把握においては、既存資料の分析や関係者へのヒアリングを通じて、風車設置海域周辺における漁業種類の活動実態を明らかにする。想定される漁業種類としては、イワシ・イカナゴ船びき網漁業、シラス機船びき網漁業、渥美外海底びき網漁業、改良備前網漁業、沖合底びき網漁業などが挙げられている。操業形態の把握では、漁業種類ごとに曳網方法や曳網距離などの具体的な操業手法を分析する。さらに、漁業経営状況の把握として、過去5年間分の漁業種類ごとの水揚げ金額や付加価値額を調査・整理し、発電設備の存在が経営に与える金銭的影響度を測るための基礎資料を作成する。
公募の特徴としては、総合評価方式に準じた選定委員会による審査が挙げられる。推進体制や実施方法、事業効果を高める付加提案といった事業評価項目に加え、環境マネジメントシステムの導入や女性の活躍推進、ワーク・ライフ・バランスの推進といった社会的取組項目も評価対象に含まれており、事業者の総合的な経営姿勢も問われる点が特徴である。
浮体式大型風車の
進入禁止範囲による影響を調査
今回の業務で得られる調査結果は、愛知県における洋上風力発電の展開において極めて重要な役割を果たす。実証海域となる田原市・豊橋市沖では、出力1万5000kW級の大型風車1基(浮体式セミサブ型、幅約100m)がカテナリー係留により設置される計画であり、海底ケーブルの敷設やフローティングライダーシステム(FLS)の配置なども予定されている。これらの巨大な構造物が海域に占有することによる漁船の回避行動や、敷設船の周囲に設定される進入禁止範囲がもたらす影響を、具体的なデータに基づいて予測・評価することが当面の課題となる。
洋上風力発電事業と既存の漁業との共存を実現するためには、客観的かつ信頼性の高いデータに基づく議論が欠かせない。今回の調査によって漁業者の操業や経営への影響が定量化・可視化されれば、不必要な摩擦を避け、より具体的で実効性のある協調策や振興策の検討が可能となる。愛知県は、本調査を起点として先行利用者との緊密な対話を重ね、地域と調和した再生可能エネルギーの導入モデルを構築していく考えだ。
愛知県洋上風力発電導入
検討調査業務
1.契約形態:委託契約
2.契約金額限度額:10,560,000円(消費税及び地方消費税込み)
3.契約期間:契約締結日から2027年2月26日まで
4.提出書類:企画提案参加申込書、業務実績書、企画提案書、見積書、経費内訳書、会社概要、定款、決算報告書(直近2年分)、社会的価値の実現に資する取組に関する申告書等
スケジュール
2026年6月22日:委託事業者募集開始
2026年7月1日 午後5時:応募に関する質問受付締め切り
2026年7月3日 正午:質問に対する回答掲載
2026年7月10日 正午(必着):提出書類の受付締め切り
2026年7月下旬:委託事業者選定委員会開催・委託事業者決定
2026年8月上旬:契約締結、業務開始
2027年2月26日:契約終了
DATA
取材・文:ウインドジャーナル編集部









