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秋田県能代市 3海域で洋上発電計画 インフラ整備も本格化

秋田県北部の能代市沖は、3つの大規模な洋上風力発電事業が集中するエリアだ。そのうちの能代港湾区域には20基の風車が完成し、年内に商業運転を始める予定。ほかの2つの海域も、これから事業の具体化に向け動き出す。建設の拠点となる港湾施設の整備もこの夏から本格化している。再エネ推進のフロントランナーを目指す能代市のいまを取材した。

アイキャッチ:能代港湾区域に設置された洋上風車

 

丸紅が国内初の商業運転へ
秋田県沖の風車が完成

秋田県能代市北部にある能代海水浴場。「ここから南へ目を向けると、風車がずらりと並んで見えるんだ。あんな大きな風車が海のうえに本当につくられるとは思わなかった」海の近くに住む高齢男性は、毎日のように砂浜に足を運んで工事の推移を見守っていたという。「このあたりは、長いあいだ海からの強い風に悩まされてきた。その風のチカラで、能代が全国から注目されるのは複雑な思いだ」。

秋田洋上風力発電(秋田市)が、秋田県沖の2海域で進めていた洋上風車の据え付け工事が今月下旬に完了した。秋田市の秋田港湾区域に13基、能代市の能代港湾区域には20基の計33基が設置された。試運転や法定検査を経て、年末までに国内初の大規模な商業運転を目指す。

「近くで見るとあまりに大きくてびっくりした」「能代の海に新たな可能性を感じた」―――。能代市では今月21日、洋上風力発電を新たな観光資源にしようと、地元の観光関係者が船に乗って港湾区域に設置された洋上風車を視察した。参加した人達は、ブレードの高さが最大150メートルもある巨大な風車を間近で見て、驚きの声を上げていた。今後は自治体関係者や発電事業者の視察が増えると予想されることから、受け入れ態勢の整備やモデルコースの設定、周辺地域との連携などに取り組む。

能代市南部・北部海域でも
大規模な風力発電計画

洋上風車33基が設置される「能代市・三種町・男鹿市沖」

能代市南側の「能代市・三種町・男鹿市沖」では去年12月、三菱商事を中心とする企業連合が事業者に選定された。ブレードの高さが最大250メートルの風車38基を設置し、総出力は約48万キロワット。26年3月に陸上工事に着手し、27年6月から洋上での工事を始める。運転開始は28年12月で、52年4月までの約24年間操業する。三菱商事を中心とする企業連合は、秋田県南部の由利本荘市沖にも風車65基を設置する。

去年9月に促進区域に指定された「八峰町・能代市沖」

能代市北側の「八峰町・能代市沖」は、去年9月に促進区域に指定された。当初は今年6月に事業者の公募を締め切る予定だったが、国の公募見直し方針を受け、現在は公募を停止している。国は新たな公募の指針を取りまとめ、その指針のもとで年内に再び公募を始める見通し。国が示した公募占用指針によると、八峰町・能代市沖の促進区域の面積は3239.4ヘクタールで、最大出力は35.6万キロワット。

能代火力
脱炭素の取り組みを加速

能代港の南側にある東北電力能代火力発電所

石炭を燃料としている東北電力能代火力発電所は今月15日、アンモニアと石炭を混ぜて燃やす「混焼」の導入を検討する考えを明らかにした。能代火力発電所では、11年から地元の未利用材を粉砕した木材チップを混焼している。それと合わせて、バイオマス燃料の原料となるイネ科の植物の試験栽培にも取り組んでいる。去年7月に、イネ科のソルガム、エリアンサス、ジャイアントミスカンサスの3種を秋田火力発電所の遊休地に植え付けた。その結果、種から育てたソルガムは、わずか6週間で2メートル以上に生長したという。試験栽培の結果を踏まえ、東北電力は24年度以降バイオマス燃料の自社製造を検討する方針。

インフラ整備も
本格化

洋上風力発電の基地港湾に指定された能代港

能代市周辺では、洋上風車の建設と並行してインフラ整備も本格化している。洋上風力発電事業の拠点となる能代港は20年9月、秋田港・鹿島港(茨城県)・北九州港(福岡県)とともに、国内初の「海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)」に指定された。今年7月からは、能代港の埠頭(ふとう)用地を拡張する工事が始まった。洋上風車の部材の荷さばきや一時保管、組み立てを行うヤードを確保するため、海を埋め立てて10.4ヘクタールを増設する。総事業費は60億円で、24年度の完成を目指す。

秋田県
旧高校跡地を再エネ工業団地に

再エネ工業団地が整備される旧能代西高跡地

「23年度の当初予算案に調査に要する費用を計上したい」―――。秋田県の佐竹敬久知事は先月31日、能代市北部にある旧能代西高校跡地に、再エネで電気をまかなう工業団地を整備する考えを明らかにした。能代市の斉藤滋宣市長が県庁を訪れ、能代港の機能強化などを要望した際に説明した。旧能代西高は約39ヘクタールの敷地があり、洋上風車の建設の拠点となる能代港にも近い。

秋田県は今年度からスタートした「第2期新エネルギー産業戦略(改訂版)」で、再エネ由来の電力を活用して、国内最大級の産業集積拠点の形成を目指す方針を掲げている。秋田県内では、三菱商事を中心とする企業連合が洋上風力発電を活用した水素製造システムの実証事業を計画している。地元の商工関係者は、水素エネルギーや脱炭素に関連する企業の進出を期待している。能代市の齊藤滋宣市長は「いろいろな事業者に入ってきていただいて、いろいろな地域貢献策をしっかり打ち出すことがたいへん大事だと思っている。関係する自治体と情報交換しながら互いに切磋琢磨し、洋上風力発電を地域の発展につなげていきたい」と話している。


取材・文/高橋健一

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