室蘭MOPA定例セミナー GWO認証の訓練施設の誘致を目指す
2024/12/16
室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)の定例セミナーが11月27日に開催され、洋上風力発電設備のGWO認証を受けたトレーニングセンターの西胆振地域への誘致を目指す方針が示されました。
メイン画像 : 室蘭洋上風力関連事業推進協議会の定例セミナー(写真提供 MOPA)
ウェールズが新規会員に
ケルト海で大規模浮体式事業
室蘭洋上風力関連事業推進協議会の定例セミナー(写真提供 MOPA)
定例セミナーの前に年次総会が行われ、第5期の活動報告、収支報告、また第6期の活動計画と予算案などを承認し、新たに副会長3名、理事3名が選任された。開会のあいさつで関根博士会長(三菱製鋼顧問)は、副会長職の増員について「会員企業が120社を超え、より深くコミュニケーションを深めていくため」と説明した。そのうえで、洋上風力発電とMOPAの役割について「北海道の西沿岸では有望地区が5か所、最近では檜山地域などで法定協議会が開かれている。拠出額では漁業関係に80%、地域振興に20%、という具体的な数字まで出ている。地域とのの共生をどう考えていくかがこれからの大きな課題になっていく中で、MOPAの役割を果たしていく」と述べた。
室蘭市の奈良信一副市長は「秋田のプロジェクトでは、建設の拠点港のひとつとして室蘭港が利用されることになり、洋上風力への拠点化に向けた動きが着実に進んでいると実感している。MOPAの取り組みが室蘭周辺の新たなサプライチェーンの構築につながることを期待している。洋上風力発電はハードとソフトだけでなく、人材育成も重要だとして、室蘭でも取り組んでいきたいと抱負を語った。
続いて、新規に入会する11社からあいさつがあり、ウェールズ政府は日本事務所欧国際外務局局長兼参事官のリチャード・コイズミ氏が「port to portの関係構築、サプライチェーンの交流」を入会理由に挙げた。ウェールズが面するケルト海では450万kWの浮体式洋上風力プロジェクトが進められている。コイズミ氏は「来年はYear of Weles and Japan 2025のキャンペーンを予定しており、洋上風力の分野でも交流を深めたい」と述べた。
浮体式洋上風力の係留ロープを開発・製造する東京製綱も新規会員に名を連ねた。同社の担当者は「浮体式実証フェーズ2の秋田県南部沖の事業者に選ばれたことを受けて、7月に洋上風力事業化推進室を新設した。その後、青森県沖のTLP型浮体の実海域実証にも参画し、これから着実に係留ロープの開発を進めていきたい」とあいさつした。
GWO認証の訓練施設
西胆振地域に誘致を目指す
MOPA調査研究グループリーダーの吉田昌弘氏(DENZAI取締役専務執行役員)が、MOPAの活動内容と今後の展望を説明した。吉田氏は、スタートから5年たって、いま一度原点に立ち返り、次の5年で何ができるのか考えるべきとしたうえで、鉄のまちが洋上風力との掛け合わせでカッコイイ室蘭を取り戻すのが原点だと強調した。
そのうえで吉田氏は、道南の松前町や檜山町でプロジェクトが始まれば室蘭が建設の拠点港になるとの見通しを示し、「ただ単に港を使ってもらうだけではなく、来年はプロジェクトのベースになるような新しいことに取り組みたい。1つは漁業との共生。環境DNAを調査すればどんな生物が生息しているのかがわかる。また、人材育成にも力を入れていきたい。洋上風力を推進するにあたってGWO認証の取得が必要だが、北海道にはトレーニング施設がない。MOPAとして外部機関と提携しながら、西胆振地域への誘致のサポートをしたい」と意欲を語った。
基調講演では、北海道経済部ゼロカーボン産業課主幹の元木実氏が、北海道における5つの有望区域の現況について「15MWという想定で試算したところ、5海域の合計で風車約260機、発電能力3900MWの導入が期待されている。5海域は急に深くなる海域が多いので、想定される風車の設置方法は1列もしくは2列」という見通しを述べた。
2020年に港湾法が改正され、洋上風力発電設備などに利用される港湾を基地港湾として国が指定することになっている。稚内港、留萌港、石狩湾新港、室蘭港の計4港が名乗りを上げているが、道内ではまだ1ヶ所も指定されていない。
元木氏は人材育成の重要性にも触れ、専門資格を取得するための経費補助や、高校生の就職先としての洋上風力発電事業を選択してもらえるよう出前授業や見学ツアーを行っていると説明した。さらに、洋上風力設備建設で必要とされるGWO資格取得者の需要について、道としては「2030年までの想定で1527人、O&Mについては169人」と試算していることを明らかにした。
秋田県北部沖の建設事業で
2027年から室蘭港を活用
洋上風力第2ラウンド事業の秋田県八峰町・能代市沖
ENEOSリニューアブル・エナジー洋上風力事業本部洋上風力開発第3部の大木和斗部長は、秋田県八峰町・能代市沖の事業のコンセプトについて「長期安定的な発電所の運営とサプライチェーン構築を通じて、地域の発展や国内産業育成に貢献すること」と説明した。
基礎工事では秋田港(秋田市)を活用し、洋上風車の設置では室蘭港を、運転開始後は能代港(秋田県能代市)を活用してO&Mを行う考えを示した。室蘭港においては2027年に港湾を整備し、28年に順次部材を受け入れ、それを室蘭港で組み立ててからSEP船に積み出し、現地で設置を行う計画だ。事業会社には、スペイン企業の日本法人のイベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパンが参画していて、大木氏は「技術的な部分でイベルドローラに期待している」と語った。
DATA
MOPA 室蘭洋上風力関連事業推進協議会
https://mopa-j.com/
取材・文/横山渉