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東京都 伊豆大島沖で浮体式洋上風力を本格検討へ

東京都は2月24日、離島振興法に基づく「東京都離島振興計画」の素案を公表した。伊豆大島(大島町)では、浮体式の洋上風力発電設備を導入して脱炭素化の推進や新産業の形成を進める。町では2023年度に風況調査を実施して想定海域を絞りこみ、実証機の設置を目指す方針。

浮体式洋上風力の
導入を検討

浮体式洋上風力発電の導入を目指す伊豆大島沖

東京都離島振興計画は、離島振興法に基づき、伊豆諸島地域の振興の方向性を示すもの。計画期間は2023〜32年度の10年間で、伊豆諸島の2町6村が対象となる。3月25日まで意見募集し、今年5月をめどに計画を正式に公表する。地域別の具体策では、伊豆大島で洋上風力発電設備の導入による再エネを活用したまちづくりを進める。環境省の「脱炭素先行地域事業」を活用し、2032年までに民生部門(家庭部門および業務その他部門)の電力消費に伴うCO2 排出の実質ゼロを実現するほか、地域と暮らしに密接に関わる分野の温室効果ガスの排出などについても実質ゼロの実現を目指す。さらに再エネを活用した新たな産業を形成することで、地域活性化や定住の促進に取り組む。

伊豆大島は、東京都心から南南西約 120キロにある伊豆諸島最大の島。大きさは東西に約 9キロ、南北に約 15キロで人口は約6800人。島内の電力は、東京電力大島内燃力発電所(出力1万5400キロワット)から供給している。本土につながる送電ケーブルがないため、東京電力の系統からは独立している。町によると、電力だけでなく消費エネルギーのほぼ全量を島外から購入する化石燃料に依存しており、燃料価格の変動が島の経済に大きな影響を与えているという。また、大規模災害によって本土が被災した場合、島への燃料供給が停止し、長期間停電することが懸念されている。

伊豆大島は、島全体が活火山だ。約3万年前に海面上に姿をあらわし、その後100~200年に一度のペースで爆発的噴火を繰り返して火山体を成長させてきた。海底部分を入れると、水深400~500mくらいの相模湾の海底からそびえ立つ大きな火山になっている。陸地から海に出ると水深が一気に深くなることから、町では海底に基礎を固定する着床式ではなく、浮体式洋上風力発電設備の設置を検討している。東京都の自治体で洋上風力発電の導入を検討しているのは、いまのところ大島町だけだ。

出力調整への
対応が課題

島の南西沖で流況・波浪調査を実施(出典 大島町役場)

町では、環境省の委託を受けて2020年度から浮体式洋上風力発電の導入の可能性を調査している。2023年度までの5年間に地域関係者との調整や設置海域および設備選定に必要な基礎調査や海象調査・風況調査などの実施調査を行い、実証機の設置やウインドファームの事業可能性を検討する調査を実施する。

町では2022年2月から約1年間にわたって、島の南西部にある鵜の根の沖合約2キロで、流況(潮の流れ)と波浪(波の状況)を調査した。調査海域を選んだ理由について、町では「南西部に水深50~200メートルの海域が広がっていて、海底地質が砂や粘土層になっていること」「水深50~200メートルの海域に風速7.5メートル以上のエリアが多いこと」「島の沿岸1.5キロのエリアに共同漁業権が設定されていて、鵜の根沖の南にある千波沖は良い漁場となっていること」「島の北西部は船舶交通量が多いこと」をあげている。

しかし、本土につながる送電ケーブルがないため、出力調整にどのように対応するのかが大きな課題となっている。町では、2023年度に風の強さなどの風況調査を実施して想定海域を絞りこむとともに、出力調整への対応を検討する方針。町水道環境課再生可能エネルギー担当主幹の川島正憲さんは「取り組むべき課題は多いが、東京都離島振興計画の素案に盛り込まれたことは一歩前進と考えている。大消費地の東京に近く、風況が良いというメリットを生かし、実現の可能性を模索していきたい」と話している。

DATA

東京都離島振興計画の素案


取材・文/高橋健一

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