注目キーワード

English 日本語

国内事例

日本を“第2の本拠地”へ。Xodusの洋上風力コンサルが日本の浮体式を成功に導く

欧州を中心に、洋上風力をはじめとしたエネルギー・コンサルティングを手掛けるXodus Group。2021年10月に設立された日本支社の代表を務める小川逸佳氏に、同社の強みと洋上風力市場の展望、そして日本の浮体式開発に懸ける想いを聞いた。

――Xodus Groupの
エンジニア・コンサルタント事業
についてお聞かせください

私どもXodusはスコットランドで創業した、元々石油・ガスのエンジニアリング会社でした。しかし、気候変動をこれ以上悪化させないために、弊社自身がまず事業内容とビジネスモデルを見直しました。すでに培った環境影響調査、サプライチェーンの分析、洋上・海中のインフラ、ケーブルに関する専門知識はありましたので、それらをレバレッジに、浮体式、水素、CCSなどにエンジニアリングの分野を広げました。

また、エンジニアリングだけではなく、顧客企業のエネルギー・トランジションにおいて必要なビジネスモデルの転換やファイナンシングなどのコンサルティング・メニューを強化しました。

その結果、多分野にわたって包括的な付加価値のあるソリューションを、ワンストップで提供することができるようになりました。現在は国境にとらわれず、英国、米国、オーストラリア、中東、アフリカにおいて、エネルギーのコンサルティング・サービスを提供しております。

エネルギー・トランジションの中でも、Xodusの主力事業は洋上風力の開発であり、特に浮体式には力を入れております。洋上風力事業では、プロジェクト開始前の市場調査、コンセプト分析、事業化のモデリング、コスト解析、環境調査、入札戦略、リスクマネジメント、プロジェクト・ファイナンス、さらには落札後の洋上施工、運用管理、撤去までを含めたコンサルティングを提供しております。それぞれの分野において、業界トップの専門家が在籍していることは言うまでもありません。

EPCIの大手Seaway7社が兄弟会社になりますが、欧州ではMoray EastやBeatriceなどの洋上風力発電所、さらに台湾では雲林洋上風力発電プロジェクトを手掛けております。そのため、弊社は既存の分野にSeaway7社のEPCIの知見を活用することが可能です。

Xodusは世界の海底、海中、洋上を住処としてきた上、常に新たな挑戦を続けております。弊社にしか提供できない、一貫したソリューションとグローバルな視点による斬新なアイデアがあると自負しております。

Xodus Groupとは?
‬英国スコットランドに本社を置き、特に洋上風力に実績を有するエネルギー・コンサルティング会社。世界で初めて事業化された浮体式洋上風力プロジェクト「ハイウィンド(Hywind)」に参加して以来、浮体式洋上風力において知見を積んできた。2022年1月に結果が発表されたスコットランド沖初の占有権入札「Scotwind」では、25GW中11GW相当に及ぶ着床式と浮体式案件を担当。2005年に設立された同社は、海洋エンジニアリング大手Subsea7の100%子会社である。

――日本に
Xodus Group Japan株式会社を
設立した理由は?

日本はスコットランドと同じ島国であり、自然エネルギ―の中でも海洋エネルギーの可能性に満ちています。海洋エネルギーの主分野は洋上風力になりますが、スコットランドも日本も水深が深いため、着床式よりも浮体式洋上風力が適しています。しかし、将来的な成長のポテンシャルを考慮すると、世界第6位のEEZ(領海、及び排他的経済水域)を約447万平方kmも有する日本は、大変魅力的な市場です。そして、浅瀬の少ない日本では、洋上風力のほぼすべてが浮体式とならざるをえません。浮体式で名を挙げてきた弊社にとっては、第2の本拠地として日本以外には考えられませんでした

日本とスコットランドの相似点は水深だけではなく、地理的に離島が多く、系統接続問題があることが挙げられます。そのため、世界で水素戦略が発表される前から、Xodusはスコットランド政府に洋上風力からグリーン水素への転換、いわゆる「Power-to-X」の提案書を提出しております。今では水素の上流から下流まで、水素ハブやコンソーシアムの形成をリードしております。また先進的な、電化では解決できない熱利用分野での水素実証案件に参画しております。

さらには、海象条件により日本もスコットランドと同じく潮流発電に適する点が挙げられます。弊社は潮流発電分野でも、世界に先駆けて離島のエネルギー問題の解決策として、スコットランドでプロジェクトを手掛けてきました。

カーボン・ニュートラルに国境はありません。Xodusの17年間の総成果を、日本の洋上風力、グリーン水素及び潮流発電に提供したく、日本支社を設立しました。2030年、2050年はあくまでもただのマイルストーンであり、人類が生きている限り、これから先も永遠に私たちは変わり続けなければ生き延びられません。日本の皆様と一緒に3E+Sをコンセプトで終わらせず可視化し、持続できる事業にすることが弊社の望みです。


「Scotwind」において、Xodus GroupがSWOT分析で参照したGISのマッピングイメージ。海域内のポテンシャルを明らかにし、最適なプロジェクトサイズや基礎タイプなどを導き出し、LCOEのシミュレーションも行った。

――どうしてXodusの日本代表に?

簡単に申しますと、自分自身を長期投資する価値のある分野は、浮体式とグリーン水素だと気が付いたからです。実際、辞表を4回出してやっとここまでたどり着きました。「青年よ大志を抱け」という家訓のもと高校より留学を始め、最初の就職先はニューヨークのウォール街でした。ロースクール卒業後もまた懲りずにウォール街に舞い戻りましたが、2度目で方向性の間違いに気が付き、自分で投資ファンドを立ち上げました。多数、多業種の企業を見ていくうちに、数字のリターンだけでは物足りなく感じるようになりました。

私自身、公害によって身体を壊したこともあり、地球レベルでの持続的な投資とはなにかと考えるようになりました。再生可能エネルギーが毎日ニュースに上るようになっておりましたが、太陽光よりも洋上風力にポテンシャルを感じ、電力市場の改革をリードしてきた英国に着目して、英国国際通商省のエネルギー・インフラストラクチャー部門を担当することになりました。海洋エネルギーでは洋上風力の浮体式の面白さを体験し、さらに水素の多様な可能性に魅力を感じ、両方ともプロジェクトを積極的に進めました。しかし、これから先の浮体式事業のマーケットサイズと水素の利活用においては、私が実際に住んでいる日本に目を向けるべきだと思っていたところ、Xodusと出会いました。

――日本の洋上風力の課題は?

第1点は、政府の役割である規制緩和と制度の明文化、政策の合理化になります。例えば、EEZのように、国にしかできないことをするのが国の役割です。洋上風力に利用できる海域を明確化し、持続的な洋上風力市場を作ることが市場競争を生み、政府の目指すコスト削減に繫がります。政府の役割は、さらに洋上風力関連の規制や許認可が不明瞭で重複している無駄を省き、合理的な枠組みを構築することです。

第2点は、2030年まで時間がない中、すでに実証されている技術は素早く事業化に持っていけるようなサポート・メカニズムを作ることです。

第3点は、実証が必要で未熟な技術には、実証がしやすいようにSand Boxや別のファンディングでサポートするスキームが必要であることです。

――コンサルタントとして、
日本の浮体式風力発電への抱負は?

洋上風力発電というのは一大インフラ事業であり、長期にわたっての開発が必要になります。そのため、各地域の住民、漁業関係者やその他のステークホルダーにとっては、自分たちの地元唯一のチャンスになる可能性が高いにもかかわらず、未経験かつ、事前準備のないまま土俵に立たされます。また事業者側としましても、1プロジェクトに多額の資金と人材のコミットメントが必要になります。それぞれが抱える大きなリスクを軽減または分散し、そしてリスクを取るべき側がリスクを取れるように、事業内容を作り上げるのがコンサルタントの仕事です。

私たちは、実に多種多様な発電事業者、投資家、サプライチェーンを構成する企業と、プロジェクトを共にしてきました。また、世界でプロジェクトをすることにより、各地域独自の事情、制約、課題があることを理解し、それに合わせた事業提案をしてきております。

私はよくウェディング・プランナーを例えに使うのですが、人生一度かもしれない大決断でありながら、皆様何度も結婚されるわけではありません。経験なしに、いきなり飛び込んで最善の結果を願うのは無謀に近いものがあります。そこで私たちコンサルタントの出番です。多数のプロジェクトを手掛けてきた知見を活かし、事業リスク予想、サプライチェーン構成、また最新テクノロジーを駆使して、この一大事業を地域、事業者、そして地球環境全てにおいて、便益の出るようにプラニングをするのが、コンサルタントの使命であり、それを日本の浮体式の成功へと繋げることが、私の抱負です。
 

 

PROFILE

Xodus Group Japan株式会社
代表取締役社長

小川逸佳氏


2009年、University of Pennsylvania Carey Law School卒業。
2009年7月〜2010年10月:Sullivan & Cromwell LLP ニューヨーク州弁護士。
2012年11月〜2021年6月:Star Magnolia Capital Ltd. Co-Founder & Partner/香港と上海に拠点を置く、マルチ・ファミリーオフィスの超長期投資ファンド立ち上げと運用。ヘッジファンド、プライベート・エクイティファンドへの投資以外にも、ブロックチェーン事業や植物工場案件などを担当。
2019年7月~2021年6月:英国国際通商省 エネルギー・インフラストラクチャーセクター 対英投資上級担当官/英国洋上風力、洋上風力海底送電線、潮流・波力発電などの自然エネルギー・エリアにおける、日本投資家・企業へのアドバイスと英国政府、自治体、学術機関や諸団体・協会との連携を一環としたプロジェクト・サポート。また、産業クラスター中心の二酸化炭素回収・貯留プロジェクト、港湾の脱炭素化プロジェクト化や、水素ハブの形成、水素サプライチェーンとオフテイカーの連携と実証に従事。
2021年6月より現職。

問い合わせ

Xodus Group Japan株式会社
東京都渋谷区恵比寿1-19-19
恵比寿ビジネスタワー10階


WIND JOURNAL vol.2(2022年春号)より転載

Sponsored by Xodus Group Japan株式会社

関連記事

世界最大の浮体式洋上風力であるKincardine発電所

アクセスランキング

  1. 【洋上風力第4ラウンド】秋田市沖、和歌山県沖東側と西側の計3海域を準備区域に、有望な区域は対象なし...
  2. 【第2ラウンド深堀り解説①】第2ラウンド4海域 それぞれ別々の企業連合が選定事業者に...
  3. 佐賀県唐津市沖、有望な区域に選定されず「県内外の利害関係者への丁寧な説明が必要」...
  4. 【洋上風力第3ラウンド】事業者公募がきょうで終了 少数激戦へ
  5. 太平洋マテリアル、洋上風車向けグラウト材で国内メーカー初の国際型式認証取得...
  6. 【特集】洋上風力「第3ラウンド」の動向まとめ 青森、山形の2海域を徹底分析!...
  7. 着床式洋上風力発電の“いま”。北九州市響灘沖で建設工事が本格化
  8. 環境省 脱炭素先行地域に9地域を追加選定。全国82地域に
  9. 洋上風力第4ラウンド、「有望な区域」の整理に向けて 国が発電事業者から情報提供の受け付け開始...
  10. ファイバーマックス、合成繊維製の浮体係留索で国内初のClass NKの認証を取得...

フリーマガジン

「WIND JOURNAL」

vol.07 | ¥0
2024/9/11発行

お詫びと訂正